両側性人工顎裂への移植実験 ヒト顎裂部への二次的骨移植術に準じて人工顎裂への移植実験を行った。移植材料の陽性対照群は新鮮自家脛骨海綿骨細片(PMCB)のみ、陰性対照群はポリ乳酸・グリコール酸共重合体ゼラチン複合体(PGS)のみを移植した。実験群では2mg/mlの濃度のrhBMP-2をPGSの坦体とともに使用し、rhBMP-2とPMCBの混合移植を行った。その混合重量比率をグループ1はrhBMP-2単独、グループ2はrhBMP-2とPMCBを1:1、グループ3は3:1、グループ4は4:1の4グループに分類した。 観察方法 移植実験12週間後に屠殺し、X線学的および組織学的検討を行った。咬合法X線写真から顎裂移植部のアルミ当量値の推移を、また軟X線写真からは骨形成の判定を行った。非脱灰研磨切片を作成し、toluidine blue染色を行い検鏡した。 実験結果 移植実験での骨架橋の形成は、実験群のグループ1では4顎裂のうち1顎裂にわずかな骨形成がみられたのみであったが、グループ2では3顎裂のうち1顎裂に骨形成が、1顎裂には骨架橋の形成がみられた。グループ3では3顎裂のうち1顎裂に骨形成が、2顎裂には骨架橋の形成がみられ、グループ4では2顎裂とも骨架橋の形成がみられた。 組織学的所見では、各実験群のなかでも特にグループ4で形成された骨架橋の骨形成量は陽性対照群と比較してもほぼ同程度であった。また海綿骨部では骨髄腔と不規則で太く成熟した骨梁構造が認められ、また層板構造が不規則で重なるようにみられる改造線も多く認められた。 アルミ当量値の経時的変化をみるとグループ4では自家骨移植の際に起こる骨形成のメカニズムとは異なり、徐々にアルミ当量値が増加し石灰化が進んでいく所見がみられた。いずれの群においても8週以後にはアルミ当量値に大きな変化はみられず石灰化の程度や骨の厚みにも大きな変化がないことから活発な骨改造はこの時点である程度終了することが示唆された。
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