近年、抗酸化食品因子による種々の生体機能調節作用が報告されている。しかしながら、抗酸化食品とリポポリサッカライド(LPS)や炎症性サイトカイン等との相互的な作用を分子生物学的に検討した報告は見当たらない。 今回われわれは、培養歯肉線維芽細胞に対して、抗酸化食品因子の中でも水溶性で溶媒の影響が少ない緑茶由来のカテキン、(-)-Epigallocatechin-3-gallate (EGCG)が及ぼす影響について検討し、以下の結果がえられた。 ELISA施行の結果、IL-6 protein産生量はLPS添加により増加し、EGCG添加により減少する事が明らかになった。PCR法を用いて、炎症性サイトカインmRNA発現に対するEGCG添加の効果を検討した結果、LPS刺激により増加したIL-6 mRNA発現はEGCG添加により、濃度依存性、時間依存性に減少する事が認められた。このことからEGCGは転写レベルでIL-6産生を抑制していることが示唆された。 一方、EGCG添加30分後に細胞を洗浄してからLPSで刺激しても、EGCGの効果は12時間後まで持続しており、EGCGは細胞内に取り込まれ、シグナル伝達の過程で炎症性サイトカイン産生に抑制的に働くことが示唆された。しかしながら、炎症性サイトカイン産生のネットワークは複雑であることから、cDNA microarrayを施行し、サイトカイン関連遺伝子240種類の発現について同時に検討を行ったが、EGCGの効果は微弱であり、バックグラウンドの消去が困難であるため、今後の検討課題と思われた。 以上のことから、緑茶による口腔内洗口が数時間後まで抗炎症作用を発揮し、歯周疾患の予防に役立つ可能性が有ることが示唆されたがその作用機序についてはさらなる検討が必要と考えられた。
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