研究概要 |
最近私達はN-フタロイルアミノ酸を架橋配位子として組み込んだキラルなロジウム(II)カルボキシラート錯体を用いることにより,α-ジアゾカルボニル化合物より生成する環状カルボニルイリドの高エナンチオ選択的分子間1,3-双極付加環化反応の開発に初めて成功した.従来,この種の反応においてイリドは金属錯体から遊離した反応中間体として振る舞うと信じられてきた.しかし,この結果はカルボニルイリドがキラルなロジウム(II)錯体との結合を保持して付加環化することを示している.そこで上記反応でその存在が明らかとなったロジウム(II)錯体-イリド複合体からなる反応性分子素子の創製の一般性ならびに有機合成への利用の可能性について検討した結果,以下の成果を得た.(1)キラルなロジウム(II)錯体を用いる環状オキソニウムイリドの分子内不斉[2,3]-シグマトロピー転位反応を行ったところ,最高不斉収率76%eeで対応する転位体を得ることに成功した.オキソニウムイリド上の酸素原子の反転のエネルギー障壁は極めて小さいことから,この結果はオキソニウムイリドにおいてもキラルなロジウム(II)錯体との結合を保持して付加環化することを示している.(2)キラルなロジウム(II)錯体を用いる環状スルホニウムイリドの分子間不斉[2,3]-シグマトロピー転位反応を行ったところ,最高不斉収率58%eeで対応する転位体を得ることに成功した.用いる触媒の構造はジアステレオ選択性に影響を与えなかったことから,スルホニウムイリドはキラルなロジウム(II)錯体との結合を保持せず,遊離のキラルなイリドを経て付加環化が進行すると考えられる.
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