多くの薬物は細胞膜受容体を介してその作用を発現する。受容体の構造研究はドラッグデザインにおいて重要である。細胞膜受容体のなかで7回膜貫通型G蛋白質共役受容体の多くは細胞内第3ループ(ICL3)の部位で直接G蛋白質を活性化するといわれている。しかしながら、いずれの受容体においてもこの部位で共通したアミノ酸配列は見当たらない。 今回、1次配列の異なるヒトのGABA_B受容体、プロスタグランジンmEP3α受容体やオピオイドμ受容体のICL3部位に相当する合成ペプチドを構造機能モデルとして取り上げ、そのGi活性および分子間相互作用を検討することにより、この部位に相当するペプチドが直接G蛋白質を活性化するかどうかをBinding Assay実験により検討し、G蛋白質と安定な複合体を形成するかどうかをSPR実験によって検討した。検討するペプチドは、GABA_B受容体については細胞内第2ループ(ICL2)と第3ループに相当するペプチド、プロスタグランジンmEP3α受容体については活性化部位を更に特定するため、第3ループ部位をN末端側のmEP3αAとC末端側のmEP3αBの2つに分けたペプチド、オピオイドμ受容体については第3ループに相当するペプチド(Hμ)である。配列中の塩基性アミノ酸は、各受容体ループ部位に多く含まれている。 GABA_B、プロスタグランジンEP3α、オピオイドμ各受容体の細胞内第3ループに相当する合成ペプチドはいずれもG蛋白質を活性化する。その際、それら受容体細胞内第3ループペプチドはG蛋白質と安定な複合体を形成することが分かった。
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