FXR遺伝子欠損の雄性マウスとその野性型マウスを比較したところ、血清中コレステロールおよび総胆汁酸レベルに違いがあり、FXR欠損マウスにおいて野性型マウスと比べコレステロールレベルが1.6倍、胆汁酸レベルが2.5倍高かった。一方FXRのリガンドであるケノデオキシコール酸を0.5%の割合で食餌に混ぜ5日間与えたところコレステロールレベルはFXR欠損マウス、野性型マウスともにコントロールレベルと差異は認められなかった。胆汁酸レベルはFXR欠損マウスにおいてコントロールレベルの10倍以上になったが、野性型マウスでは2.3倍であり、FXR欠損によってマウス生体内の胆汁酸レベルの調節機構に障害が生じていることが示唆された。雌性マウスにおいても0.5%ケノデオキシコール酸処理により雄性マウスと同様のコレステロール、胆汁酸レベルを示したが、FXR欠損マウスにおいてのみ肝臓の有意な肥大が認められた。胆汁酸の排泄に関与すると考えられる薬物代謝酵素の発現量をウエスタンブロット法で解析したところ胆汁酸の6β水酸化を触媒するCYP3A分子種の発現量がFXR欠損マウスにおいて有意に高いことが明らかになった。さらに胆汁酸の3α位の水酸基の硫酸抱合反応を触媒するsulfotransferase 2A分子種がFXR欠損雌性マウスにおいて野性型マウスと比べ有意に高いことも明らかとなった。これらの結果はFXR欠損マウスにおいて胆汁酸排泄に関与するある種の薬物代謝酵素が適応反応により変動している可能性を示唆している。また血清中コレステロールレベルがFXR欠損マウスで有意に高い原因について現在、コレステロールの生合成に関与する肝臓の代謝酵素、肝臓へのコレステロール取り込みに関与する受容体、末消組織における輸送担体の発現量、機能の解析を実施している。さらにFXR欠損マウスに高脂血症治療薬を投与することにより血清コレステロールレベルとこれらの機能タンパクの発現がどのように変動するか検討する予定である。
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