研究概要 |
先天性アンチトロンビン(AT)欠乏症において、分子内ジスルフィド結合異常をもつ変異型AT(AT Morioka, Cys95Arg)が、小胞体では分解されず細胞質中に出現するRussell body様構造体に蓄積していることを発見した。そこで本年度は、ジスルフィド結合異常とRussell body形成の関連性、小胞体ストレス情報の解析を行い、以下の新知見を得た。 1.AT分子内の3つのジスルフィド結合を担う各CysをArgに置換したATを安定発現するCHO細胞を作製した。各変異ATは、AT Morioka同様、細胞外への分泌速度が低下し、かつ細胞内での分解を受けず蓄積した。また免疫電顕による解析により、どの変異細胞にもRussell bodyの形成が確認された。いづれのジスルフィド結合異常も共通の仕組み(小胞体分子シャペロンとの結合など)により、Russell body形成をもたらすことが示唆された。 2.Russell bodyは、分泌顆粒程度からミトコンドリアより大きいものまで種々のサイズを示した。その形成過程と運命を解析するため、ドキソサイクリン添加によりAT生合成を厳密に制御できるCHO細胞を作製した。ドキソサイクリン添加により、AT蓄積顆粒の形成を免疫電顕で観察すると、まず小胞体由来と推定される多数の膜構造が出現し、その中に変異ATが存在していることが明らかになった。本細胞を用いることにより、Russell body形成過程が追跡可能性となった。 3.AT(Cys95Arg)のRussell body形成に伴う小胞体ストレスを、小胞体シャペロンの誘導の観点から解析した。その結果、GRP78の発現が4倍増加していた。またGRP78の一部は変異ATと結合していた。現在、他の小胞体分子シャペロンの変動を解析している。
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