本年度は、小胞体(endoplasmic reticulum)ストレス(ERストレス)誘発剤tunicamycin(Tun)投与マウスを用いた検討を中心に研究を行った。C57BL/6JマウスにTunを投与したところ、肝臓においてmetallothionein(MT)の合成が観察された。Tunの標的臓器と言われている腎臓ではMTの誘導は観察されなかった。そこで、肝臓に焦点を当ててさらなる検討を進めたところ、Tun投与により、ERストレスのマーカー蛋白質であるERシャペロンBip/GRP78およびMTの発現が認められた。MTの生理的役割としては、活性酸素消去作用と亜鉛代謝調節作用が知られている。そこで、Tun投与に伴う肝臓中MT濃度・亜鉛濃度、活性酸素の指標として過酸化脂質濃度の経時変化を検討したところ、MT誘導と活性酸素の産生に相関が認められた。そこで次に、生体内の主要抗酸化物質であるグルタチオン枯渇剤を前投与した後にTunを投与したところ、過酸化脂質の産生とMTレベルの上昇が観察された。この結果よりTun投与に伴うMT誘導に活性酸素の産生が関与している可能性が示唆された。また、MT欠損マウスにTunを投与したところ、正常マウスと比較して有意なBip/GRP78の発現の亢進が観察されたことから、MTはERストレスに対して抑制的に作用するものと推察される(日本薬学会第122年会発表予定)。今後は、ERストレスと活性酸素の産生の関連性等についても検討を加える予定である。
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