研究概要 |
本年度は、小胞体ストレスに対するメタロチオネイン(MT)の誘導および小胞体ストレス依存的細胞死に対するMTの防御作用について検討を行った。 1)作用点の異なる小胞体ストレス誘導によるメタロチオネイン誘導:昨年度はtunicamycin(糖蛋白質合成の糖鎖付加反応初期段階の阻害剤)によるMT誘導を明らかにしたので今年度は作用点の異なるthapsigarin(Ca^<2+>-ATPase阻害剤)をマウスに投与して検討した。肝臓におけるBip/GRP78mRNAの発現度は顕著に増大し、同時に肝臓でのメタロチオネイン誘導はMT-I,-II共に顕著に増加した。小胞体ストレス負荷ではMTが誘導される事が明らかとなった。 2)メタロチオネイン誘導の組織特異的誘導:小胞体ストレス誘導剤投与マウスでは肝臓ではMTは誘導されるが、脳ではMT誘導は見られていない。使用薬物の分布による可能性がある。 3)メタロチオネイン誘導への活性酸素関与の可能性:小胞体ストレス誘導剤tunicamycin投与マウス肝臓における脂質過酸化物を測定すると、24時間をピークとした増大がみられた。一方、MT誘導度は投与後増大しはじめ48時間が最大となった。小胞体ストレス誘導(Bip/GRP78mRNA)も観察された。更にグルタチオン枯渇剤前投与後に小胞体ストレス誘導剤を投与して検討すると、過酸化脂質濃度及びMT濃度は、誘導剤単独投与群よりさらに増大した。tunicamycinによるMT誘導には活性酸素の関与が考えられた。しかし、thapsigarinは活性酸素量とは直接関連性がみられないがMT誘導がみられた事から、小胞体ストレス負荷に至るまでの機序にかかわらず、小胞体ストレス負荷になるとBip/GRP78と同様にMTが誘導され、修復などの機構に関わっている事が推察された。
|