心筋障害の程度を血中へのZ帯構成要素の漏出量で評価するシステムの開発を目的として以下の研究を行った。まず、Z帯構成要素異常を心筋疾患との関連を解析したところ、タイチン、MLP、テレトニンの3種のZ帯構成要素の変異を肥大型心筋症および拡張型心筋所に見出した。一方、M21トランスジェニックマウスの心肥大期に発現変化する遺伝子群をDNAChipを用いて網羅的に解析したところ、既知の心肥大マーカー遺伝子であるBNPやアクチンと同程度に発現変化する遺伝子群を多数同定した。ついで、タイチンのZ帯領域あるいはMLPに対する単クローン抗体を作製し、これを用いて心筋組織を免疫染色し、タイチンはZ帯領域に分布することを確認した。一方、MLPは従来知られていたZ帯への局在以外に、Z帯周辺にも分布することを見出した。また骨格筋と心筋を比較すると、心筋にはMLPが多量に存在するが、その多くはZ帯を含む膜分画以外に分布しており、比較的容易に筋組織から抽出可能であることが判明した。また、2種の抗タイチンZ帯領域抗体を用いたサンドイッチELISA法を確立し、これを用いて心筋症患者の数%に血中タイチンが検出されたが、心筋梗塞等の急性障害では血中タイチンの遊離は認められなかった。これに対して、2種類の抗MLP抗体を用いたサンドイッチELISA法で測定したところ、心筋症患者では血中MLP高値者が存在した。また陳旧性心筋梗塞患者は血中MLPを検出できなかったが、急性心筋梗塞患者の約25%で血中MLPが極めて高値であった。以上の結果から、血中MLP測定により心筋障害の存在を推測可能であることが示唆されるため、今後その他の抗MLP抗体の組み合わせを用いたアッセイ系の確立と、心筋障害度と血中MLP量の関連性および時系列測定を行うことで、実用化可能なアッセイ系を設定する。
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