鼻腔内に定着したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は院内感染の原因となりうるため、ハイリスクエリアの患者に対して除菌が行われる。除菌に用いられるムピロシンは優れた効果を示す抗菌薬であるが、耐性菌の出現が問題となっている。東北大学医学部附属病院において耐性化が進行した1999年5月〜2000年3月に分離されたMRSAのうち67株について、E-testにより薬剤感受性試験、PCR法によりムピロシン耐性遺伝子の有無を検討し、さらにパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法による分子疫学的解析を行った。 1999年8月以降の分離株から、E-testで1024μg/ml以上のムピロシンに耐性を示すMRSA 21株が検出された。これらの株はPCR法によりムピロシン耐性遺伝子を有することが確認された。PFGE解析を行った51株は類似度の高い7つの型に分類された(A型30株、B型13株、C型2株、D〜I型各1株)。高度耐性株のうちPFGE解析を行った20株はすべてA型であり、中等度耐性株も8株中5株がA型であった。熱心に除菌を行ってきた1病棟(N病棟)から分離された23株中22株がA型であり、うち17株が高度耐性株、4株が中等度耐性株、1株が感受性株であった。B型のほとんど(13株中12株)は感受性株であった。 本研究により、ムピロシンによる除菌を行ったN病棟においては耐性を獲得したA型株が保菌されており、ムピロシン除菌を行っていないその他の病棟では感受性のB型株を主とする株が保菌されていることが明らかになった。9つの型のMRSAはPFGEパターンが類似していることから、これらの株は院外からの持ち込まれたものではなく、院内で変異を起こしたものと推測される。
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