研究課題/領域番号 |
13877415
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研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
竹熊 千晶 熊本保健科学大学, 保健科学部, 講師 (20312168)
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研究分担者 |
岡部 由紀子 熊本保健科学大学, 教授 (70160702)
田口 宏昭 熊本大学, 文学部・地域科学科, 教授 (20040503)
日高 艶子 鳥取大学, 医学部・保健学科, 助教授 (50199006)
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キーワード | 「のさり」 / 文化 / 病い・障害 / 伝承 / 対処力 / 高齢化 / 近所づきあい |
研究概要 |
本年度は研究の最終年度であり、これまで行った調査の分析を中心に補足調査を行い、報告書としてまとめ学会への発表、論文としての投稿を行った。 1.学会発表について:国際家族看護学会(ボツワナ、6月)において「障害を包み込む文化としての『のさり』("Nosari",a word which supports accepting a chronic illness or a physically and psychosocially challenged situation)」として採択され発表予定であったが、SARSの影響のため中止となった。国内の家族看護学会においても本テーマで毎年発表を行っており論文として投稿中である。来年度、国際看護科学学会および国際地域看護学会に再度報告するつもりである。 2.アンケート調査について:天草御所浦町地域ケア調査報告書として(1)住民編と(2)中学生編の2部を作成し、調査を行った地域の役場、教育委員会、老人保健福祉施設、各区長、中学校などに送付した。調査の結果、地域住民の92.1%、中学生の70.2%が「のさり」という言葉を知っていた。高齢化の進むこの地域で、住民のつながりは「冠婚葬祭の手伝い」から「食べ物のやりとり」まで多岐にわたっていた。電話やメールといった機器の使用より、『直接会って話す」というコミュニケーションの方法がとられていた。中学生は自分も含めた家族成員が近所の人へ「あいさつ」「立ち話」「おかずのおすそわけ」などをよくすると認識していた。「地域活動への参加」は祖父母も含めた家族全員が高率であった。家族成員が近所の人とよくつきあいがあると認識している中学生は、地域の高齢者が寝たきりになった場合の介護への参加の意識が高いことが明らかになった。 3.インタビュー調査について:病いや障害のある本人及び家族、地域の役場職員、福祉施設などのケアスタッフ、地域に住む自立高齢者からのインタビューから、「のさり」は日常生活の慣用語として使用され、人間の成長発達、様々な体験とともに変化していた。そして人々のあらゆる苦難の状況の中で、その状況を自分の人生の中に引き受けることの役割を果たしていた。それは家族や地域へのコミットメントが影響を与えていた。しかしこの言葉には同時に両義性があることも確認できた。 4.まとめ:中学生の「のさり」は同居家族からだけでなく地域の大人からの伝承も多く、このことを考えれば「のさり」という障害文化の伝承は、人々の苦難の状況への対処力を高め、さらに地域の介護力をも高める可能性が示唆された。
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