研究概要 |
関東近郊の500床以上の総合病院3施設の内科・外科病棟に勤務する看護師191名(平均年齢29.2±7.7歳,平均臨床経験年数7.6±6.9年)を対象として,MST(Moral Sensitivity Test)日本語版を用いて臨床の場での葛藤場面における認知と対処の調査を行なった。MSTの信頼性係数(クロンバックα)は0.72であった。主成分分析の結果,役割遂行,患者の意志の尊重,誠実,責任,葛藤,情,配慮,柔軟性,信念が含まれていることを確認した。看護師の施設と経験年数(5年未満群と5年以上群に分類)によるMSTの差をMann-WhitneyのU検定を用いて分析した。その結果,ベテラン看護師と新人看護師では,葛藤に直面しているという認識と患者との人間関係における自信に差がみられ,価値観や信念を重んじること,医師への信頼,規則に従順であることは施設により差がみられた。また,経験や情を重んじること,看護の意義・やりがい,適性に対する自信は施設や経験年数による差のない,看護婦に共通の認識であることが示された。MST日本語版は,構成概念が倫理的判断に必要な感性の要素であること,看護師の道徳的感性の特徴を明らかにするために有用であることが確認されたのを踏まえ,看護師の葛藤場面の認知と対処の実態と道徳的感性の調査票を作成した。 平成14年度は,作成した調査票を用いて,手術室看護師50名,対照群として成人病棟看護師30名を対象とした調査を行ない,手術室看護師の倫理的な葛藤場面の認知と関連要因を対象者の背景や道徳的感性の特徴から分析する。その結果を踏まえ,手術室看護師の倫理的責務について検討する。
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