研究課題/領域番号 |
13877421
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研究種目 |
萌芽的研究
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大久保 功子 信州大学, 医療技術短期大学部, 助教授 (20194102)
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研究分担者 |
湯本 敦子 信州大学, 医療技術短期大学部, 助手 (10252115)
玉井 真理子 信州大学, 医療技術短期大学部, 助教授 (80283274)
麻原 きよみ 信州大学, 医療技術短期大学部, 教授 (80240795)
百瀬 由美子 信州大学, 医療技術短期大学部, 講師 (20262735)
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キーワード | 出生前診断 / 家族 / いのち / 文化人類学 |
研究概要 |
遺伝子診療部での遺伝子診断前後の診察場面と、産科病棟での羊水穿刺の前後の参加観察を行った。いずれも長子が遺伝性の疾患を抱えているか、当人が遺伝性の疾患の保因者であるため、次子の妊娠に際しての検査であった。承諾の得られた1名とのフォーマルインタビューを行った。また、遺伝子診療部のカンファレンス、地域の周産期カンファレンス、関連学会での参加観察も平行して行っている。インフォーマルインタビュー述べ7件。以上を現場でのメモおよび日誌とフィールドノート2冊に記録した。事例を大別すると、次の5ケースに集約できる。ケース1:家族の意思を尊重し先天異常の子どもの出生後、みとりのケアをした。ケース2:障害のある子が生まれた場合の蘇生処置に対して妊娠中から夫婦で意見が食い違い介入した。ケース3:次子にも長子と同じ遺伝性の疾患があると診断を受け、選択的妊娠中絶をし、夫婦間での感情のすれ違いに苦悩した。ケース4:妊娠中に胎児の異常が発見された時点で中絶が当然だといわれ、妊娠を継続するために病院を変えた。ケース5:出生後に深刻な障害があることがわかり、子どもの救命処置をするしないで夫婦間で意見が対立した。 世の中の人に私のような人間がいることを知ってほしいというインタビュイーの要請を受け、臨床人類学の手法を用いたケース研究としての発表に向け、論文を執筆中である。また、主要な作業としては、現時点では、出生前診断における専門家の捕らえる命と、素人の捕らえる命との対立構造が浮かび上がってきている。一方、専門家とはいえ、専門が違うことで知識と態度に格差を生じ、家族は複数の専門家の間を駆けずり回っている。意思決定、対児感情、選択的中絶後の悲嘆過程において、出生前診断が夫婦の間に新たな亀裂を生むことがある。医療者は意思決定を男性側に求めがちでも、男性の苦難に対しケアを提供する人はいないという特徴があった。
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