本研究の最終目的は、精神的側面の機能障害を有する脳血管障害患者が通常のコミュニケーションを用いることを前提としない応用行動分析の手法を用いた学習プログラムの開発である。 初年度に当たる平成13年度の研究目標は、上述した特徴を有する対象の生活動作の習得方法の実態を明確にすることである。方法と結果は以下の通りである。 1.研究方法 1)対象:I県にあるリハビリテーション医療を主とする病院の回復期病棟に入院中の患者のうち、FIM (Functional Independence Measure)の認知能力得点の中でも、「理解」の得点が2以下の7名を対象とした(聴覚あるいは視覚によるコミニュケーションの理解能力が、基本的欲求についての指示、会話の49%以下を理解している) 2)日常生活場面(食事、排尿、排便、移乗、移動)及び訓練場面を通して、コミュニケーション障害を有する対象に対し、看護者及び医療者はどのようにケアや訓練を行い、また、患者はどのように日常生活動作を獲得しているか、を観察した。 3)期間:平成13年4月2日から10月17日まで。 2.結果 対象のコミュニケーション能力が不十分であるが、すべての看護者及び医療者は主に言語的コミュニケーションを通して働きかけようとしていた。この他、補助手段として絵や記号なども用いられていた。習得困難な動作に対しては、繰り返しを通してアプローチされていた。一方、患者の習得状況として、繰り返すことで、遅々とした学習であったが少しずつ習得していた。多くの試行を必要としていた。中でも、特にFIMの理解得点が1点の患者は、学習効果が低く、コミュニケーション能力が大きな障害となっていることが原因と考えられる。かなり重度のコミュニケーション障害を有する対象は、訓練不可能として訓練対象から除外されるケースも2例存在した。このように、コミュニケーション障害があるにもかかわらず、この能力を前提とする学習方法には限界があると考える。
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