研究概要 |
本研究は,遺伝性疾患を持つ女性にとって,自分自身の遺伝的特質を親から受け継ぎ,また,自分自身の子どもへと引き継ぐことの意味を探ることを中心に据えて,女性が子どもを産み育む体験を記述することを目的としている。 本研究の分析方法は,現象学的アプローチである。このアプローチは人間の生きられた経験を研究する方法を提示しようとするものであり,そこにはそうした経験に参加する個々人に対して,それらがもつ意味の記述が含まれる。全体的存在としての人間の信念や価値そのものを探究することを目的としているものである。そして体験の意味をその最も十全な広さと深みで,露にしようとする研究方法である。 本研究の協同研究者は,遺伝性疾患の中の,軟骨無形成症を持つ女性に協同研究を依頼した。軟骨無形成症は長骨骨端部の軟骨化骨障害である。常染色体優性遺伝だが,80%以上は突然変異である。 本年は,関東に在住する3名の女性のインタビューを開始しており,現在も続行中である。データ分析を開始しているが,データの信頼性確保のために,看護学博士,臨床遺伝医,社会学者によるスーパービジョンを受け,研究者が協同研究者に対する公正さを保ち,得られた情報の妥当性を図っている。 女性たちは離婚・子どもの不登校,自殺未遂,患者会の立ち上げや脱退,ホームページの開催といったトピックスを通してみずからの体験を語っている。遺伝性疾患という終わりのない課題に対する体験の語りはまだ間歇せず続いているため,3名の体験の共通性,相違性に関する分析はまだ行っていない。今後,さらに3名のインタビューを加えて分析を開始する予定である。
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