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2002 年度 実績報告書

遺伝性疾患患者と家族にとって、遺伝性素因を受け継ぎ、引き継ぐことの意味

研究課題

研究課題/領域番号 13877428
研究機関広島大学

研究代表者

中込 さと子  広島大学, 医学部, 助教授 (10254484)

キーワード遺伝的特質 / 女性 / 現象学的アプローチ / 看護 / 生殖 / 障害観 / 軟骨無形成症 / 育児
研究概要

本研究は,遺伝性疾患を持つ女性にとって自分自身の遺伝的特質を親から受け継ぎ,また自分自身の子どもへと引き継ぐことの意味を探ることを中心に据えて,女性が子どもを産み育む体験を記述することを目的とした。
研究方法は理論前提をHeidegger, M.の現象学的存在論とし,現象学的アプローチを用いた。協同研究者は軟骨無形成症の女性5名とした。データ収集は非構成的面接とした。
5人の固有の体験から共通する意味が確認できた。それは1)'自分だけの特質'と向き合う,2)他者評価を超えて,自己を正当に評価する,3)生きてきた体験をもとに子どもの人生に関与する,4)遺伝した子どもを育てることを通じて,自己の存在の意味が明確になっていく,5)ありのままの自分たちを受け入れているからこそ形のないものを志向する,であった。
遺伝的特質を持った女性はその生涯において幼少期から自己の障害観を形成する。学校や社会,治療体験,家庭内の親子関係,とりわけ親自身が持つ障害観が強く影響した。新たに自己観を再構築するには,社会や親といった第3者の価値から形成した障害観を崩し,それに反発できるほどの当事者の力を引き出す外力が必要だった。やがて,彼らは他者評価を超えて,自己を正当に評価するようになった。
出産の機会を通じて,自分自身の障害が遺伝性であることを知って,繰り返される病であることの意味を見出そうとした。共通しているのは,世代間で引き継ぎ,受け継がれるものが,単に「軟骨無形成症」という遺伝性疾患の'遺伝子'だけではない点であった。その障害と共に生きてきた経験を,同じ障害を持って生まれてきた子どもの為に,活かす,すなわち,自分の生きてきた経験を子どもの人生に関与させていた。
さらに子どもに引き継がれた遺伝子がその子どもの人生を困難にする可能性があるとしても,子どもの存在自体を認めることができた時に,同時に自分の存在の「意味」を問いかける条件が整うと考えられた。そこから自分の障害や特質が自己を規定するのでなく,自己の存在自体が,子どもの将来や,子どもたちが生きていく社会を規定するという積極的な生き方に変わっていく可熊性があることが示唆された。

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公開日: 2004-04-07   更新日: 2016-04-21  

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