平成13年度科学研究費補助金実績報告書の項目に従って本年度実績報告を行う。 1.高齢者の体力を考慮したショートテニスにおける運動強度の評価 評価指標としてPWC(身体作業能)を用いたが、昨年度報告書にも記載したとおり、20歳代でPWC50〜60%HRmaxでの評価可能かを検討した。その結果60%水準では可能であるが、それ以下では運動開始心拍数が問題となることが示唆された。また今年度は、60歳代〜70歳代を被験者にPWC60%HRmaxでの体力評価を行い、ショートテニス時の運動負担度の指標として用いた。 2.高齢者の体力を考慮したショートテニスのマテリアルの評価 昨年度構築した、インパルスハンマーと振動解析プログラムに基づいた計測システムを用い、現在使用されるショートテニスラケットおよびボールの振動特性評価を行い、高齢者を考慮したマテリアルについて検討した。ショートテニスラケットでは長軸方向の長さが短いため、一般のテニスラケット比較して周波数の高い振動特性となる。このため、高齢者を対象に用いられるボールは質量の軽いスポンジ系のボールのみが適当であると判断された。 3.高齢者の体力を考慮したショートテニスルールの確立 PWCのほか筋力等も考慮し、特に心拍数の視点から高齢者の体力を考慮したショートテニスのルールの確立を行った。尚、本年度は筋電図解析は用いなかった。ここではPWCによる体力評価を基に、個々の60%HRmax程度となるようにルールの構築を行った。その結果、バトミントンコートの1/2を1人の守備範囲としたタブルスのゲームが、適当な運動負荷であることが示唆された。しかしこの場合、体力的に優れた高齢者では物足りないという内省も報告された。 4.自立ゲーム支援システムの開発 昨年度構築したデジタルビデオによって得られた画像を、コンピュータに取り込むシステムを用いて、種々のスポーツに応用させるとともに、心電図や筋電図を送信してコンピュータに取り込むシステムを構築したが、これらの同期については現在も進めている。インターネットによる送信システムは、平成14年度の課題であったが、計画がやや遅れ、平成15年度の夏を目処に実験を継続している。 5.新しい問題点 高齢者(痴呆患者ではさらにこの問題が大きくなると予想される)では、心電図(HRモニターも含め)等の装着に対して嫌悪感を抱くことが少なくなく、より簡単に生体情報を検出できるシステムが必要と考えられる。また、前述のように、個人の体力に固体差が大きく、適当と判断された運動強度では物足りないと感じる高齢者も少なくないことが明らかとなった。
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