研究概要 |
本研究は,これまでボーリングステッキやハンドオーガーに代わる人が持ち運べる簡易な地層採取抜き取り装置(Geoslicer)を開発し,沖積層の微細構造の試験的調査研究を行うものである. 本年度は,軟弱な沖積低地で効率よく試料を採取することが可能な装置として,長さ100? 200cm,幅10cm・厚さ1.5cmステンレス製の安全で軽量かつ運搬に適した地層抜き取り装置(Portable Geoslicer)を数種類作成した. これらの,試作品に関心を持つ研究者(今回は,他組織属している研究者が多いため,共同研究分担者とはしなかった)に配布し,それぞれの調査適地において試験的に使用してもらい,装置の有効性をチェックした.また,重機などを用いた観察ピット掘削や大型のGeoslicerによって得られた観察結果との比較を試みた. この結果,人力で特殊なハンマー(shockless hammer)を用いて打ち込む装置によって,沖積層の微細構造を示す不攪乱試料を得ることが可能であることがわかった.しかし,装置の引き抜きには困難が伴うことがわかり,軽量な専用三脚が必要であることが明らかとなった.また,長い試料を得るために試作した運搬が容易な接続型の装置は,接続部の構造が脆弱であったため,さらに改良をする必要があることが明らかになった. 北海道釧路湿原では,この装置を並べ打ちし幅広い地屑断面を得ることで,シルト層を挟む泥炭層の堆積構造を観察することができた.伊勢湾西岸平野では,湿地堆積物の中に津波堆積物の可能性がある粗粒の砂層などの異常堆積物の存在を確認することができた.一方,火山灰や粘土などの細粒な地層の採取には困難が伴うこと,試料の量を必要とする土壌採取装置としては装置の厚さが重要であることなど装置改良の必要性が指摘された.
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