平成14年度は、平成13年度に実施した調査の分析をし、調査対象地での報告を行った。 調査は、地域通貨クリン(北海道夕張郡栗山町)の第3次試験流通参加者(16歳未満を除く)496名(有効回収率36.9%)を対象に、自記式質問紙を用いた郵送法により、2002(平成14)年2月に実施した。調査項目は、属性、クリンに対する理解度、クリン使用頻度、生活の変化((1)生活の質に対する意識(2)クリン使用による生活の変化(3)主体的な生活者としての能力の形成)を設定した。調査結果は次の通りである。クリンに対する理解度は、人とのふれあい、人助け、自分の能力をいかせることをクリンに期待し、交換するサービスの選択基準も信頼や親しさを重視していることから、理解度が高いと判断できる。クリン使用頻度は、クリンでサービスを提供、またはサービスを受けたことがあるのはそれぞれ約4割であった。生活の変化では、(1)生活の質に対する意識が高く、半数以上が無報酬労働を認めている、(2)クリン使用による生活の変化では、人間関係や地域との関わりに顕著な効果がみられた、(3)主体的な生活者としての能力の形成では、これからの社会や生活に自分の積極的な行動や地域の協力を重視し、主体的な生活者としての能力が形成されている、ことがわかった。次に、クロス集計と多次元クロス表の分析から、生活の質に対する意識として設定した「無報酬労働を認める意識」と「クリンに対する理解度」が、クリン参加者の生活の変化の説明要因として最も説明力が大きいことがわかった。さらに、クリン使用者の分析からは、「提供回数」の説明力も大きく、提供回数が多いほどクリン使用者の意識と行動の変化を促すことがわかった。以上のことから、地域通貨の目的の理解とサービス提供の経験が、質的な豊かさを重視する意識と主体的に地域や自分の生活をつくりあげていく能力を形成する可能性があることが明らかになった。
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