研究概要 |
納豆はビタミンK(VK)含量が特に多く、栄養価の高い伝統食品であり、納豆を摂取することで血清VK濃度が上昇することが報告されている。我々は、納豆菌の生産するVKが特異的な糖ペプチド成分(vitamin-K binding factor; KBF)と結合し、安定なミセルとして可溶化されていることを見いだしており、本研究では、納豆中のKBFめ存在がVKの体内への消化吸収を促進しているのではないかと考えて実験を開始した。 まず、Bacillus sutilis (natto)からKBFの精製法を検討したところ、培養上澄をイオン交換クロマトグラフィーで部分精製した後、酸沈殿を行うことで効率良く回収できることが判明した。さらに、脱脂後逆相HPLCにより、KBFは少なくとも5成分(画分A〜E)に分離されることを明かにした。各成分を常法に従い加水分解後アミノ酸組成を調べた。画分Aと画分Bのアミノ酸含量は50%以下であり糖ペプチドの可能性が示された。画分C,画分D,画分Eはアミノ酸含量が100%であり,ペプチドである。いずれの画分もアミノ酸組成は類似しているため,HPLCにおいて分離される理由はアミノ酸配列や構造の違いによるものと推察された。エドマン分解により配列の決定を試みたが,アミノ酸配列は決定できなかった。部分加水分解した試料についてはいくつかの断片配列が認識された。これらのことから,N末端がブロックされている可能性が示唆された。 KBFの生理的機能を明らかにするために、腸管上皮培養細胞(Caco-2等)を用いてVKの細胞透過性に関する実験を行い,KBFの与える効果を調べた。脱脂KBFを添加すると,添加量に応じてVKの細胞透過性が上昇したが,KBF自身の添加でも上皮細胞層の電気抵抗値が激減した。このとき細胞が死滅していないので、KBFは細胞膜に何らかの影響を及ぼしていることが考えられた。
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