研究課題/領域番号 |
13878025
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研究種目 |
萌芽的研究
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
遠西 昭壽 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (20135396)
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研究分担者 |
吉田 淳 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90115668)
川上 昭吾 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (10033896)
石田 博幸 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (30024003)
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キーワード | 理科授業 / 観察・実験 / 科学観 / 構成主義 / 科学知識 / コミットメント / 教師の役割 / 教授学習論 |
研究概要 |
理科授業においては、観察・実験は中心的な教授学習行動だと考えられている。たしかに、観察・実験は理科に特徴的な方法ではあるが、科学知識の習得という点では必ずしも中心的であるとは言えない。これまで、観察や実験の結果から「きまり」や「特徴」を見つけだす授業が小学校や中学校で一般的に行われてきているが、これは自然法則や科学概念、科学理論といった科学知識が必然的に導出されるとする前提で授業が設計されているからであり、経験主義的な科学観にもとづくものである。 今年度の研究では、 1.子どもたちの「観察事実」と彼らのア・プリオリな理論の関係、 2.子どもたちのア・プリオリな理論が「反証事例」によって反証されうるか、 3.帰納的発見的な授業と演繹的受容的な授業を比較する、 といった調査、実験が行われた。 その結果、この研究によって明らかになりつつあることは、 1.子どもたちの「観察事実」は彼ら自身の理論に依拠した解釈的事実である、 2.その結果、彼らの理論は「反証事例」によって反証されない、 3.実験は、「成功」している限りにおいて新しい知識を生成することはない、 4.実験は、ア・プリオリな理論の正当化による個人的コミットメントの形成の過程である、 5.個人的、もしくは集団的(合意による)知は科学知識にはならない、 6.科学知識は科学者の創造物であり、教科書や教師によってもたらされる(教師の役割)、 というところである。 このことは、理解の本質は理論に対するコミットメントにこそあることや、科学知識は科学者の創造物であるとするポスト経験主義科学観、意味は伝達せず社会的過程において構成されるとする構成主義の主張によく一致する。 理科学習の困難性の原因を学習内容にのみ求めるのではなく、教授学習課程の問題として、とりわけ授業における観察や実験の位置づけについて再検討の必要性が示唆されるが、何分、新しい研究で手間もかかり、また事例研究の積み重ねであり、成果の公表には時間が必要である。
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