インターネットを使った大学教育における問題点を研究するために、以下の大学の大学教育開放センター、遠隔教育センター担当者および研究者に、電子メールや面接調査で、インターネットを用いた教育の問題点について訪ねた。 (1)カリフォルニア大学ロサンゼルス校、(2)スタンフォード大学、(3)ハワイ大学、(4)マサチューセッツ工科大学、(5)ジョージア工科大学、(6)トロント大学このうち、(1)(3)の大学については2002年3月に(2)、(6)の大学については2002年8月に訪問し、関係者に面接調査を行った。 この調査から得られた知見は次の通りである。 1)当初もてはやされ、新設、拡張していたインターネットを用いた教育に関連する部局・機関の多くは、現在縮小、廃止、他の部局機関と統合されている。 2)当初は双方向性やインタラクティヴ性を持つとされたインターネットを用いた教育は、結局は在来の通信教育や大学教育開放と変わらない一対多数の一方通行になってしまうことがわかった。ただし、スピード、利便性、量、情報の届く範囲という点でかなり進歩した。その反面、これまで以上に受講者が増えたのに比例して途中放棄者の率は上がってしまった。 3)各大学とも、単にインターネットで情報をおくるだけでなく、受講者にアドヴァイスや励ましを与えるコーチをつけ、電子掲示板などで受講者同士の教え合いを促すなど、さまざまな試みをしたが、はかばかしい効果を上げられなかった。 4)スタンフォード大学のライホルト研究員がいうように、教育は人と人との接触によって起こる社会的行為であり、教える側と教えられる側がその場にいないインターネットを用いた教育は根本的に不完全で、スクーリングなどで補完しなければ教育効果を上げられない。ただし、受講生が極めて大きな学習動機を持っていて、受講する科目が極めて実用的な場合は別である。
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