高齢者介護の現場には、研修生という形ですでに外国人が入っている場合がある。通常、一定の日本語研修を受けてから実際の介護現場に入ることになるが、ほとんどの場合、日本語によるコミュニケーション能力は初級の域を出ず、1年間の研修が終了した時点での意思の疎通も、ごく限られた場面での限られた機能的会話に限られることが多い。しかしながら、研修生の場合、本国ですでに介護の現場で働いているので、技術や細部の違いを別にすれば、介護行為そのものに問題がある場合は少ない。 コミュニケーションに関して言えば、特に痴呆症状のある高齢者を介護する場合には大きな問題とはならないようである。そういった場合、調査した研修生が中国人であり、外見的に日本くと異ならないことから、介護者が外国人であることを被介護者が認識していない場合も多く、感情的な抵抗感も生じない。 他方、被介護者に痴呆症状がない場合、介護者に日本語によるコミュニケーション能力が乏しいことから心理的なラポールは確立しにくく、十全な介護をするには問題が多い。一過性の研修生としてではなく、実践的な労働力として外国人を考えるなら、日本語教育を含めた種々の教育サポートが必要となろう。 研修生に対しては、来日当初の日本語教育の後、研修に入ってからは週一回程度通訳が研修現場へ来訪するなどのサポートがとられていることが多いが、日本語教育は特に介護現場を意識したものとはなっていないし、通訳がいない場合には互いに十分な意思の疎通ができる共通言語を欠く状態におかれている。これは、いわゆる単純労働とは違い、生身の人間を相手にする職場においてはより大きな問題となってくる。 実際的な労働力として介護現場に外国人が入ってくるかどうかは定かではないが、そういった将来を見越して対応を考えていく必要があると考える。
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