研究概要 |
医薬学の分野において,薬効試験は極めて重要であるが,臨床試験においては治験者に対して苦痛を伴うことも多い.そこで,複数の薬の効果を調べる際に,治験者に対する薬の効率的な投与方式を理論的に考察することは重要になる.そのような背景の下に,本研究では上記の問題をもっと一般的に,2処理,3処理割り当て実験問題と捉えて考える.未知のある成功率を持ついくつかの処理があり,その処理に対象を与えて実験を行い成功率を比較する.このとき,実験計画とは,初めに対象全体の一部を割り当てて実験を行い,最も高い成功率を持つ処理(最良の処理)と判定し,残りの対象はその処理に割り当てるものとする.ここで,対象全体を各処理に均等に割り当てたときが真に最良の処理を選択する確率が最大となるのだが,これでは最良ではない処理にも数多くの対象を割り当ててしまうので,対象の犠牲を考慮した場合にはあまり好ましい割り当て方とは言えない.そこで,対象の犠牲をできるだけ少なくすることに重点をおき,比較実験を行った場合の割り当て方のルールを定める.そして,そのルールの下でリグレット(regret)を定義し,そのミニマックス解を求めることによって実際の割り当て方を決める.まず,Bather(1985)に基づいて2項試行による2処理割り当て実験において,適当なルールの下で,処理1または処理2を最良と判定する確率について検討し,そしてリグレットのミニマックスについて数値的評価を含めて考察する.また,その議論を2項試行に基づく3処理割り当て実験の場合に拡張し,さらに正規分布に従う試行に基づく3処理実験についても考察する.
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