研究概要 |
昨年度から行ってきた演奏の可視化表現についての実験を続け,今年度は"演奏の違いの説明"という点で有用な可視化表現を実装し,可視化分野で権威のある国際会議IEEE Visualizationで発表した.演奏可視化についてはその意義と利用例についての主張を別の大きな国際会議ACM Multimediaで発表した.また,デジタル化した楽譜と組み合わせて楽曲理解のための支援システムを構築し,これについても国際会議WEBDelivering Musicでの発表を行った.いずれの発表においても演奏可視化は興味をもって受け入れられた. 本年度の研究成果により,演奏表情を客観的に理解する補助手段として可視化が効果的であることを述べることができたが,以下の問題点が明らかになった. -演奏要約の可視化.演奏において人間は各音を聴くと同時に,音楽的に意味のある構造単位でも聴いている.構造単位での演奏表情が明らかになるような可視化表現はどのようなものか. -演奏表情が似ていることの説明.本年度は各音の情報をアーティキュレーション(音のつながり方),テンポ,音量変化という音楽の意味により可視化を行ったことで演奏表情の違いを説明できた.このように部分的な差異を明らかにすることはできたが,現在の表示では似ているかについて,図形を用いた判断ができない.図形の距離による演奏の類似と聴者による類似判断は一貫性があるか. -アンサンブル演奏の可視化.本年度はメロディ演奏を取り出して可視化を行ったが,単一の楽器でもピアノ曲ならば伴奏部分と合わせて演奏が作られる.さらに,アンサンブル演奏を可視化する場合には単一の楽器だけでは意味がない.しかし,複数の旋律を同時に可視化する場合には,各パートが異なる拍で演奏したり,異なるリズムだったりするため,本年度のような細かい情報の可視化は適用できない.どのような可視化表現が適当であるか.
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