前年度定式化したラフ集合論に基づく分類概念の比較を発展させ、個別分類概念の比較のみならず分類体系全体の比較への適用を検討した。分類概念の集合による近似表現としては、その分類概念が満たすべき属性の集合として表現する属性的表現と、その分類概念に含まれる個体を列挙する直示的表現の二通りが可能である。このうち、属性集合による表現が分類体系に類似する一方、個物による表現は分類概念に類似性を有する。このそれぞれの表現についてラフ集合論における正負集合を想定することが可能であるが、形式概念分析的観点からすればそれらは相対的であり、従って属性表現における正集合と個物表現における負集合が対応すると考えることが可能である。これらの双対性に注意しつつラフ集合を用いることにより分類体系と分類概念を分離でき、さらにランクの変更に対してロバストな比較手法が得られることがわかった。この比較手法の検証のため、複数分類体系を比較した上で相違のある部分を抽出しつつ並列表示するユーザインタフェースを検討した。分類体系の比較は木構造の比較に類似した部分もあるが、分類概念の不定性を考慮すればノードを所与のものとする木構造の比較表示手法はそのままでは適用できない。仮に複数分類体系に含まれる相応する分類概念があたかも所与のものであるかの様に対応づけられたとしても、木構造の視覚的比較にしばしば見られる、並列させた木の間に対応するノードを線分で結ぶ手法は必ずしもわかりやすいものではないばかりか、比較すべき対象構造が3以上の場合には事実上適用不能である。そこで、相応する分類概念を同定できた場合にはそれらの分類概念を水平方向に整列させつつ表示するため、必要に応じて分類名の重複を許した参照分類体系を比較すべき分類体系から合成し、その参照体系を基準として個別分類体系を表示する手法を開発した。
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