研究概要 |
本年度は、ブロック雪崩の動的特性の解明を主体に、咋年度設置した実験用シュート(高さ9.4m、幅0.9m、勾配32.6°)における衝撃力測定実験と、雪渓斜面上での雪ブロックの挙動観測を行った。 シュートでの雪塊の落下・衝突実験において、低密度の雪塊は、衝突によって塑性的な破壊をし衝突時間が長いため衝撃力は分散して小さくなるのに対し、ブロック雪崩を構成する高密度の雪塊は、衝突によって脆性的に破壊し短時間に衝撃力が集中するため、大きな衝撃力を示すことがわかった。ブロック雪崩は一般的に規模が小さいが、このように衝撃力が大きくなるため、低密度雪の雪崩と比べて衝突した場合の危険性が遙かに大きい。また、衝突時の最大衝撃力は、雪の密度の増加とともに大きくなり密度600kg/m^3附近から急増すること、その急増は衝突時に脆性破壊が卓越するようになるためであることが明らかになった。 実験用シュートにおける雪塊の落下運動はほとんどが滑り運動であることがわかったため、実際の雪渓において、切り出した高密度の雪ブロックを雪渓斜面に落下させ挙動を観測した。この結果、雪ブロックの運動形態は転がり運動が主体であるが、雪渓表面の凹凸によって高さ50cm程度の跳躍運動もすることがわかった。画像解析によって雪渓斜面を落下する雪ブロックの等価摩擦係数を測定した結果、ブロック雪崩は,起伏の大きい崖すい斜面における落石の運動に近いことがわかった。また、この等価摩擦係数や現地調査などから得た速度に比例する抵抗係数を使って勾配32.6°の斜面上での雪ブロックの運動シミュレーションを行ったところ、雪ブロックは運動を開始してから30秒以内に8m/s〜16m/sの定常速度に達することがわかった。ブロック雪崩の落下速度は流れ型雪崩(〜20m/s)と同程度であると言える。
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