研究概要 |
純水中に150ppm含まれるHDOを超臨界二酸化炭素(SF-CO2)にリン酸トリブチル(TBP)を添加することによって,常温,加圧下で超臨界流体抽出し,H2Oとの分離係数を測定評価した.抽出操作は,液体二酸化炭素をシリンジポンプで高圧セルに導入し,予め調整したTBP水錯体と接触させた後,高圧容器ごと遠心分離機にかけ,水相,有機相,超臨界相を分相した後,必要試料をサンプリングし,有機相中のH2OまたはD2O量はカールフィッシャー水分計で,H2OとHDOの存在比はFinnigan MAT252型質量分析計で測定することにより,分離操作で得られる各相の割合とH2OとHDOの分離係数を評価した. 常温,常圧で純粋なD2OをTBPで抽出する実験を実施した結果,TBPとD2OはH2Oと同様に1:1錯体を形成することがわかった. 150ppmのHDOが含まれる純水をTBPで抽出すると,HDOは水相に濃縮され,その分離係数は1.019±0.001であることがわかった. ここで得られたTBPとH2OまたはHDOとの錯体をSF-CO2で抽出すると,TBPに錯形成していたH2OおよびD2Oが水相として分相され,HDOはこの水相中に濃縮され,その分離係数は純水に対して1.012±0.001〜1.026±0.001となり,SF-CO2の圧力(8〜16MPa)によって緩やかに変化することがわかった. SF-CO2の圧力が高くなるほど,分相されるH2OおよびHDOの量が増えることから,SF-CO2はTBPによるH2OおよびHDO抽出の貧溶媒として機能すると考えられる.
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