本研究では、硝酸性窒素に汚染された地下水が台地から谷地へ湧出・流出する際に、どのようなプロセスにより消失あるいは減衰しているのか、またこのプロセスを継続的に維持している水文地質的条件を解明することを目的にしている。 つくば市内の台地末端部の実験地(10mx15m)で、100本以上の観測井戸・ピエゾメータを設置し、地質構造を明らかにするとともに、地下水のポテンシャルを計測し、地下水の流動系を明らかにしている。水質分析により、これまでに得られている結果は以下のようである。 本地域では地下水中における硝酸イオンの減衰帯が湿地周辺斜面に局地的に存在し、30mg/L程度の硝酸イオンが減衰帯を通過することにより1mg/L以下となる。地下水中における硝酸イオンの減衰帯は2つで緑灰色のシルト・粘土層中とローム層-砂・礫層境界部である。地下水中のローム層-砂・礫層境界部に位置する減衰帯は、その地質境界からローム側へ約10cm以内の範囲においてのみ存在し、上部のローム層や砂・礫層中には、硝酸イオンの明瞭な減衰帯は認められなかった。このように、減衰帯は空間的に連続しているものではなく、局地的に散在していることが判明してきている。これらの減衰帯では、マンガンと鉄の濃度とpHが増加し、硫酸イオンと陽イオンであるカルシウムやマグネシウムが減少している。これらの点から、消失あるいは減衰のプロセスとして、脱窒や希釈などが複雑に関与しており、今後も観測を継続し、次年度にとりまとめる予定である。
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