近年のアレルギー性疾患等免疫系の異常による疾患の増大は、先進工業国における人々の肉体的、精神的、経済的に大きな損失であることが問題となっている。この、免疫系の異常による疾患の増大は、遺伝的要因と環境要因が考えられるが、特に環境汚染物質の関与が疑われて久しい。しかしながら、ディーゼル微粒子が環境因子として認められつつある以外は、免疫系疾患に関わる環境汚染物質中の原因物質の同定が進んでいない。これは、複雑な免疫系に作用する物質を検出する良いシステムがなかったからである。 そこで、本研究では、免疫系に作用して機能の異常をもたらす環境汚染物質を鋭敏に検出するシステムを、免疫B細胞におけるV(D)J遺伝子組み換えに焦点を絞って開発することを試みた。ダイオキシン類化合物の中には、免疫機能に異常を起こす化合物Pentoxifyllinが存在することが知られている。したがって、この免疫遺伝子の体細胞組み換えを検出するシステムが完成すれば、環境汚染物質の中に、V(D)J遺伝子組み換えを阻害する化合物が見い出されるはずである。 マウス・プレB細胞38B9をリポ多糖(LPS)処理により成熟B細胞に分化し、その過程で免疫遺伝子のV(D)J組み換えを行うことが報告されている。そこでK鎖遺伝子組み換えの検出を、分化した細胞のgenomic DNAをテンプレートとしてPCRを行い、共通配列をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションすると4本のバンドとして検出された。この方法を用いれば、環境汚染物質による組み換え阻害による免疫毒性を評価できると考えられる。
|