研究概要 |
本研究には、ニワトリBリンパ細胞株、つまり親株(DT40)、DNA二重鎖切断修復の相同組換修復系に関与するRad54遺伝子をノックアウトした細胞株(RAD54^<-/->)、非相同的末端連結修復系のKu70遺伝子をノックアウトした細胞株(KU70^<-/->)、この両遺伝子をダブルノックアウトした細胞株(RAD54^<-/->/KU70^<-/->)の4種の細胞を用いて、一つ一つの修復系が欠損するごとに放射線感受性になることや、細胞周期感受性の変動(G1-early S期の高感受性やlate S期の抵抗性)(EMBO J.,17,5497-5508,1998)や分割照射回復(Radiat. Res.,155 680-686 2001)における2種類のDSB修復系の関与を明らかにしてきた。 これらのニワトリ細胞系を用いて、非常に低い線量および線量率においても放射線細胞死がDSB修復系の欠損の度合いに応じて、感受性となるか、低濃度の酸化的傷害剤に対しての感受性は、DSB修復系の欠損の度合いと無関係であるかどうかを確かめることによって、通常の生理学的作用による酸化生成物による損傷と低レベル電離放射線による損傷との相違点を明らかにしょうとするのが本研究の目的である。 線源は150kVpX-線発生装置と低線量・低線量率γ線照射装置を用いる。また、酸素ラディカルとしては、過酸化水素(H_2O_2)用いた。また、マルチガスインキュベーターを用いて高酸素ストレス(高濃度の酸素含有率の空気で培養)を検討した。低線量率照射は、京都大学の放射線生物研究センターに運び込み、低線量率γ線照射装置で、約1Gy/dayの低線量率で照射し、細胞数の増加への影響や、細胞死の影響を観察した。結果は、2種のDSB修復が欠損させると1Gy/minと1Gy/dayでの生存率曲線が全く同じになった。ことのことから電離放射線による細胞死の主因がDSBであることを示唆した。一方、低濃度の過酸化水素はDSB修復能の欠損とは比例しなかった。本研究により低線量放射線と酸化的代謝による傷害とは異なることを支持するデータを得られた。
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