研究概要 |
天然由来の高分子である縮合型タンニン(ワットルタンニン)分子を水酸化ナトリウムあるいはアンモニア水溶液に溶解し、ホルムアルデヒドで架橋することによって、Na型、NH_3型タンニンゲルを合成した。Na型タンニンゲルを硝酸で処理することでH型タンニンゲルを得た。これら3種類の構造の異なるタンニンゲルを用いてホウ素化合物(B(OH)_3, B(OH)_4^-)の収着試験を行い、収着形態及び収着能について次の様な知見を得た。 1.Na型タンニンゲル:初期pH=3〜12の水溶液は、Na型タンニンゲルとの中和反応によりpH=8〜9にシフトし、ホウ素化合物の収着量は1.38〜1.81[mg-B/g-dry gel]であった。 2.NH_3型タンニンゲル:初期pH=3〜12の水溶液は、NH_3型タンニンゲルとの中和反応によりpH=6.4〜7.6にシフトし、ホウ素化合物の収着量は1.54〜2.95[mg-B/g-dry gel]であった。 3.H型タンニンゲル:酸性領域においては、ホウ素化合物の収着は認められなかった。アルカリ性領域においては、O.88[mg-B/g-dry gel]と収着量は極めて小さい値を示した。3種類のタンニンゲルのホウ素化合物に対する吸着能の差違は、タンニンゲル中のカテコール基の解離度に依存すること、NH_3型タンニンゲルについては、窒素原子のプロトン化/脱プロトン化に依存することを明らかにした。 ホウ素化合物の収着メカニズムを吸着等温線及び^<11>B固体NMRにより検討した結果、吸着はラングミュア式で整理でき、理論最大吸着量は3.55[mg-B/g-dry gel] (Na型タンニンゲル)、8.55[mg-B/g-dry gel] (NH_型タンニンゲル)であった。Na型タンニンゲルに関しては、カテコール基とホウ素化合物が、1:1または2:1で反応していることが明らかとなった。
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