草方格とはアシワラ、ムギワラ、イナワラなどを砂中に埋めて、地上部に10〜20cm出して、碁盤の目状に設定した防風施設であり、多くは1×1mとして設定されている。これによって防風・防砂を行い、また気象改良を目的として、日本では鳥取砂丘などでかなり古くから実施されてきた。また中国ではかなり多く普及しつつある。しかしながら、その微細気象的特徴は、不思議なことにほとんど解明されていなかった。 従って、本研究では、愛媛大学農学部に設定した高さ15cmのイナワラの草方格を用いて、微細気象の観測を実施した。その結果、ワラ列の直前、直後から20cm付近が大きく減風し、またワラ列直後から幾分後方で日中に昇温が認められ、夜間はワラ列付近で保温が認められた。相対湿度については気温の変化とは逆の変化傾向が晴天日に観測された。また、地表面温度にも特徴的な昇温・降温が認められ、気温との相関が高く、ワラとの関係が論じられた。さらには、気温較差の減少や風速のワラ列後方での回復の程度が比較的早く、5〜6列の草方格で防風林帯の5〜6列林帯と類似した風速の回復現象の特徴的結果が得られた。 中国の乾燥地、敦煌の沙漠での観測によると、極めて乾燥しているため、また草方格の高さが低く、強風が多かったために、顕著な傾向は認められなかったが、それでも減風はもとより、気温、湿度、特に地表面温度には特徴的な傾向が認められた。アシワラがかなり砂に埋まっているため、効果範囲は狭かったが、その低い状況に従って、十分その減風効果、気象改良効果が観測された。ただし、夜間の観測時にも強風が吹いたため、気温、湿度などの気象の差異は小さかったが、強風時の砂丘における砂の移動状況の特徴がよく観察できた。
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