研究概要 |
次世代のクリーンエネルギーの1つに空気電池がある。空気電池の特徴はエネルギー密度が極めて高いことである。正極活性物質として空気中の酸素を用いるため軽量化が可能で、リチウムイオン二次電池の重量エネルギー密度(約150Wh/kg)に対し、亜鉛-空気電池の理論エネルギー密度は1,330Wh/kgと極めて大きなエネルギーが期待できる。さらに、空気を活性物質として用いるため環境低負荷型の電池である。しかし、現在は多孔質テフロン膜の孔を酸素が透過してくるため、水蒸気も同時に正極に侵入し触媒劣化が引き起こされている(作動寿命は極めて低い)。また、孔からの電解質の蒸発や漏液性の問題も指摘されている。従って、表面が完全無欠陥で電解質の蒸発や漏液性の問題を起こさず、しかも高い酸素透過性を保ち、かつ水蒸気バリヤー性を示す新しい高分子膜が求められている。 本年度は、昨年度新しく開発した超薄膜スキン層を有する含フッ素ポリイミド非対称膜の表面のみを配向させることにより、酸素選択性を飛躍的に向上させることに成功し、優れた酸素透過特性を実現した。表面特性はATR-IR、固体NMRを用い評価した。また、その気体透過安定性も検討し、超薄膜スキン層を有する含フッ素ポリイミド非対称膜に酸素をくり返し透過させても、長時間その透過性が保たれることが明らかになった。さらに、水収着実験より膜内の水の状態を解析した結果、疎水性高分子内で水クラスターが形成され、水の透過性を抑制することが明かとなり目的とした空気電池の可能性が示された。
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