研究概要 |
低分子量GTP結合蛋白質ARFは,オルガネラ間の蛋白質輸送を行う輸送小胞の形成を調節する。細胞質に不活性なGDP結合型で存在するARFは,グアニンヌクレオチド交換因子(ARF-GEF)により活性を有するGTP型になるとオルガネラ膜に結合する。その部位にCOPIやAP-1などのコート蛋白質複合体が結合して輸送小胞の形成が始まる。次に,形成された輸送小胞上のGTP型ARFにGTPase活性化蛋白質(ARF-GAP)が作用してGTPがGDPへと加水分解され,ARFとともにコート蛋白質が小胞膜から遊離する。この裸の輸送小胞が標的オルガネラ膜に融合し,蛋白質輸送が完了する。つまり,細胞内小胞輸送はARF-GEFによるARFのGTP型への変換とARF-GAPによるGDP型への変換により調節されている。 これまでのところ,細胞内でGTP型のARFのみを特異的に検出する方法はない。しかし我々は最近,GTP型ARFとのみ結合して小胞輸送を調節する蛋白質GGAを同定し,GGA分子の中央にあるGGAHドメインがARFとの結合に関与することを示した。そこで本研究では,このGGAHドメインを利用して,細胞でのARFの活性化機構について調べた。 1.GGAのGGAHドメインとGTP結合型のARFとの相互作用について,GGAHドメインの種々の変異体を作製し,相互作用の詳細を明らかにした。また,GGAHドメインのX線結晶構造解析を行い,その立体構造を明らかにした。 2.ARF-GEFの一種BIG2が細胞内でARFを活性化し,トランスゴルジネットワークでのクラスリン/AP-1コート小胞の形成に関与することを証明した。その際に,GGAのGGAHドメインを用いて,細胞内で実際にARFがBIG2により活性化されることを示した。 3.別のARF-GEFであるGBF1が細胞内でARFを活性化し,シスゴルジでのCOPIコート小胞の形成に関与することを証明した。
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