哺乳類の概日リズム(サーカディアンリズム)発振の分子メカニズムの根幹は、核内転写因子である時計遺伝子産物同士が、自己の転写を抑制的に制御することによることが判ってきた。時計コンポーネント遺伝子の同定が進んだ今、今後は、時計の発振、その制御の分子メカニズムをいよいよ蛋白質レベルで解明することが必要不可欠となってくることは必至である。本申請研究では、概日リズムを発振する時計本体の発振の分子メカニズムをタンパク質レベルで解明することを目的とする。そのため、マウス脳の視交差上核のSCN細胞の初代培養系を用い、蛍光顕微鏡下に生きた単一SCN細胞の時計発振を可視化する。次に、セミインタクトSCN細胞を調製し、その中で時計本体を昼・夜の細胞質を用いて再構成する。その再構成系を用いて、時計発振メカニズムを蛋白質レベルで解明する。本年度は、時計遺伝子の一つであるマウスPeriod遺伝子(mPer)上流配列(プロモーター領域を含む)にレポーター遺伝子としてd1-GFP遺伝子(改変型GFP)を繋いだ遺伝子(mPer-d1-GFP)を作成し、mPer-d1-GFP遺伝子を持ったトランスジェニックマウスを作成した。d1-GFPとは、哺乳類細胞内で半減期約1時間で分解を受ける改変型のGFPである。そのため、mPer遺伝子を発現する臓器の細胞内で、約一時間だけ蛍光を発することができる。つまり、トランスジェニックマウスのSCNニューロン及びmPer遺伝子を発現している臓器(の細胞)は、概日リズムと同期して蛍光を発することになる。 現在、in situハイブリダイゼーション法を用いて発現変動を解析している。
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