前年度、我々はαシヌクレイン(αS)が神経細胞だけでなく、グリア細胞や血管内皮細胞、血管平滑筋細胞にも認められることを見い出した。さらにU251グリオーマ細胞においてはαSが炎症性サイトカインのひとつであるinterleukin-1βの刺激により時間および濃度依存性に亢進することを見出した。この結果をうけ、本年度、マクロファージに着目しさらなる研究をおこなった。→1 一方、培養ヒト正常アストロサイトにおいて、αSと高い相同性を示すβSもまたmRNAおよび蛋白レベルで発現していることを明らかにした。本年度、炎症性サイトカインによるβSの発現変動を明らかにするため研究をおこなった→2 1.αSの発現はヒト末梢血から採取した単球/マクロファージにも認められた。グラム陰性菌の細胞壁を構成するリポポリサッカライドおよび炎症性サイトカインのひとつであるinterleukin-1βにより単球/マクロファージを刺激すると、αS蛋白は時間および濃度依存性に亢進することを見出した。しかしmRNAレベルにおいては影響を認めなかった。以上のことから、炎症下で認められるαS蛋白の発現亢進は蛋白の分解系が調節している可能性が示唆された。 2.ヒト由来グリオーマ細胞株(U251)において、βSの発現レベルはinterleukin-1βの刺激により抑制された。αSが同条件で発現亢進することを併せ考えると、細胞内においてαSとβSは相反して変動する可能性が示唆された。
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