神経系-免疫系の相互作用におけるテレンセファリン(TLCN)の役割を解析するために、我々は昨年度確立したマウス海馬初代培養神経細胞と活性化免疫細胞であるLAK細胞のin vitro共培養系を用いて解析を行った。その結果、共培養開始後2.5時間以内に神経細胞の樹状突起やmicrospikeの減少や切断などの大規模な形態変化が観察された。これらの現象はLAK細胞の分泌する可溶性因子によって引き起こされていることが、transwell membraneやLAK細胞の条件培地を用いた実験から明らかにされ、さらにグルタミン酸受容体阻害剤によってそれらの効果が抑制されたことから、グルタミン酸受容体を介した情報伝達機構が神経細胞-LAK細胞の相互作用において重要な役割を果たしていることが示唆された。さらに、共培養の経時的観察からは、LAK細胞が神経細胞の樹状突起や細胞体と接着しつつ移動する様子や突起を切断しているような様子が見いだされた。活性化された免疫細胞は標的細胞との間に免疫シナプスと呼ばれる特異的な接着構造を作ることが知られており、神経細胞と活性化免疫細胞との間にも何らかの特異的な接着構造が形成されている可能性が考えられ、より詳細な解析が続けられている。今後、神経細胞と免疫細胞の直接接触を介した相互作用の分子機構解析やin vivoにおける解析を進めることで、神経疾患等における神経細胞死や神経変性の分子機構理解や予防・治療法の模索に貢献する重要な知識が得られるものと期待される。 なお、本研究において得られた知見は、平成14年度の日本神経科学会大会においてポスター発表され、平成15年開催の国際脳科学会議(IBRO)においてより詳細な解析内容がポスター発表される予定である。
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