1.霊長類ES細胞の樹立 体を構成する全ての細胞に分化できる、多能性をもつ細胞として胚性幹(ES)細胞が研究されている。この多能性は主にマウスES細胞を用いて研究されてきたが、ES細胞の再生応用を目的とした場合霊長類のES細胞樹立は必須である。我々は実験動物されヒトに近縁であるカニクイザルのES細胞樹立に成功した。このES細胞を解析したところ、マウスES細胞と同様の多分化能をもつが、その表面マーカーはマウスES細胞と異なる点があり、ヒトES細胞により近い性質をもつ事が明らかになった。 2.ES細胞のもつ体細胞核の再プログラム化能 ES細胞は自分が多分化能をもつばかりか、細胞融合により体細胞核をもES細胞様に再プログラム化し多能性を付与できる能力がある事が明らかになった。ES細胞と体細胞の融合細胞における体細胞核の再プログラム化は、(1)体細胞の不活性X染色体の融合細胞での再活性化、(2)体細胞で発現抑制されている未分化特異的遺伝子Oct4の融合細胞での再活性化、(3)融合細胞のもつ多分化能から示された。本研究は、体細胞核を再プログラム化する因子検索のための培養系システムとして、また再生医学への応用の観点からも注目される結果である。
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