13年度の研究において以下のことを明らかにした。 モルモットの摘出輸精管平滑筋標本を2ml容積のマグヌス管に懸垂し、単発のパルス性電気刺激による輸精管の一過性収縮反応性に対するパルス性磁気刺激ならびに静磁場刺激の影響を観察した。連続性パルス磁気刺激(0.5Hz、5パルス)のみでは平滑筋に何ら影響を与えなかったが、このパルス性磁気刺激後では電気刺激による一過性の筋収縮は増加し、0.5Hz・20パルスの磁気刺激では電気刺激による一過性の筋収縮を逆に減少させた。その減少作用は10-30分持続した。0.5Hz・20パルス性磁気刺激による筋収縮減少作用は、栄養液からカルシウムを1/2に減弱させるか、カルシウム拮抗薬であるニフェニピンの存在下では逆に増強し、同様の減弱作用はカルシウム流入促進薬であるBayK8644の存在下でも観察された。また、ニフェニピンの存在下において、減弱した電気刺激による収縮力は、0.3Tの静磁場環境下では増強した。NO(一酸化窒素)の合成阻害薬であるニトロアルギニン存在下では電気刺激による収縮作用は減弱したが、この減弱作用に磁気パルスを与えても影響は観察されなかった。以上の実験成績から、パルス性磁気刺激は直接平滑筋収縮には影響を与えないが、電気刺激による収縮反応を減少させたことからシナプス伝達機構に何らかの影響を与えたことが示唆され、おそらくカルシウムチャンネルのコンフォメーションに何らかの変化を与えたことによると考えた。
|