研究概要 |
本年度は、まず温度感受性SV40 large T抗原Tgマウスの胎児肝臓(胎生14日)より細胞株の樹立を試み、約40細胞株を樹立した。RT-PCR,ノザンブロット,ウエスタンブロット,免疫染色を用いて、それら細胞株を解析した結果、αフェトプロテインやアルブミンといった未分化肝細胞のマーカーを発現している細胞株が16種類あった。これらの中で温度変換による分化誘導が可能な、未分化な肝芽/肝前駆細胞様細胞株7E2-Cを樹立した。この細胞株は33℃では約24時間の倍加時間で増殖、培養温度を39℃の変換すると完全に増殖が停止して分化し、G6PaseやTATといった肝細胞分化マーカーを発現し、形態的にも成熟肝細胞に類似した形態をとり、細胞内グリコーゲン蓄積も観察され,胎生肝臓の発生機構を解析する為の良いモデル細胞になると考えられる。 次に、胎児肝細胞の発生に従い発現変動する遺伝子を、cDNAチップの解析により行った(マウスGEM2マイクロアレイ:クラボー)。プローブは、マウス胎生12日の肝芽/肝前駆細胞(約200胎児分)と胎生17日の胎生肝細胞(約50胎児分)からそれぞれpolyA RNAを抽出し、Cy5とCy3で蛍光ラベルしたcDNAプローブを用いた。チップ上に搭載されている全9,514遺伝子のうち、発現量の差が2倍以上のものが351遺伝子で、発生にともない発現が増強されたものが218(既知175,新規43)、発現減少したものが133遺伝子(既知100,新規33)であった。データベースによるホモロジー、モチーフ検索、ノーザンブロットによる発現解析等から、約10種類の遺伝子に着目し、現在解析を進めてる。この中には、胎生10日目の肝臓原基に発現しており、発生にともない発現減少し、成体肝臓では全く発現していない膜たんぱく質をコードする遺伝子も含まれており、現在、抗体の作製も進めている。
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