研究課題
デジタルX線写真は、既に一般病院でも利用されており、第一世代の小さな画像しか提供できなかった時代に比べ、描出能力は高まってきている。しかし、じん肺法では、従来法の胸部写真を使うように定められており、近年、労働省からの通達が出るまでは、デジタル写真はじん肺スクリーニングには不適との印象が強かった。我々は、デジタル胸部X線写真をもちいて、じん肺の描出に最適な条件の抽出を試みた。従来より、この分野で先進的研究を進めてきた珪肺労災病院にあるデジタル写真、従来法、CTのコレクションにより・デジタル写真、特にFPD方式がかなりより画像を提供し得ることが示されてきた。これらを含めたサンプル画像を用いて一般医を対象に読影教育を行ったところ、従来法の写真、デジタル方式の写真ともに読影に際し、困難を認めなかった。むしろ、問題となったのは、原版からアナログ方式なり、デジタル方式なりでコピーしたことによる画像の劣化であった。我々は新たに福井県下の粉塵暴露者に参加を呼びかけ、症例対象研究を行った。我々がもちいた対象は、主に現在日本のじん肺法において1型あるいは0型とされている極めて早期の粉塵暴露者である。また、健常者約20名をコントロールとして募集した。彼らに対し、従来の胸部X線写真、デジタルX線写真2種類(FPD方式、CR方式)、高分解能コンピュータ断層写真(HRCT)をもちいて検査を行った。我々の対象について得られたデジタル胸部X線写真は既に、従来法に匹敵する描出力を持っていることが明らかとなった。また、先鋭度を強調する、コントラストを強くするなどの画像処理を行うことで、じん肺陰影を強調して見せ、従来法より指摘しやすくできる可能性が示唆された。この結果については、第日本産業衛生学会において発表予定である。残された課題は、得られた条件を普遍化して、じん肺用の世界標準とし、あらゆる施設において、同様の条件でじん肺のスクリーニングがなされるようにすることである。また、各国のじん肺スクリーニングによって得られた試料をもとに新たにデジタル画像を用いたILO標準写真を選定することである。
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