研究分担者 |
金井 克光 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80214427)
野田 泰子 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (50262019)
中田 隆夫 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (50218004)
武井 陽介 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (20272487)
川岸 将彦 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (60323606)
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研究概要 |
1)新しいモーター分子群KIFsのうち、KIF12,KIF13B, KIF14,KIF16A, KIF16B, KIF18A, KIF18B, KIF19A, KIF19B, KIF26A, KIF26Bの遺伝子のクローニングを行い、各々の全長cDNAをとりその一次構造を決定した。その機能の解析の為、分子細胞生物学的研究を進めている。 2)GFP-KIF17を培養海馬神経細胞に導入しKIF17が膜小胞に結合して、樹状突起内を末梢方向に運ばれそのcargoには35%以上にNMDA型グルタミン酸受容体が含まれていること、またアンチセンス法、ドミナントネガティブ法等によりKIF17の量を減少ないしその機能を抑制すると樹状突起内でのNMDA型受容体のクラスターの密度が減少することが分かった。またAP-VによりNMDA型受容体の機能を抑制すると、NMDA型受容体サブユニットNR2BのmRNA及びKIF17のmRNAの量も増加し、転写レベルでKIF17とNR2Bに相互関係があることも明らかとなった。(Guillaud, L.et al.J.Neurosci.23:131-140 2003) 3)分子の中央部にモーター領域のあるユニークなKIF2の機能を明らかにするため神経に多く発現されるKIF2Aの遺伝子欠失マウスを作製解析した。KIF2Aは微小管を脱重合し、神経成長端で微小管の不必要な伸長を抑制していることが分かった。KIF2Aが欠如すると軸索側枝で微小管が伸長し続け、その結果側枝の異常な伸長が起こり、神経細胞の移動が障害され、大脳皮質、海馬等、脳の層構造形成が異常になることが分かり、KIF2Aが神経回路網形成に必須の役割を持っている事が分かった。(Homma, N.et al. Cell 114:229-239,2003) 4)KIF2が微小管を脱重合する機構を解析するため哺乳類KIF2サブファミリー、KIF2A, KIF2B, KIF2CのうちKIF2Aより微小管脱重合能の高いKIF2CのX線結晶解析を行った。ADP結合状態及びATP結合様状態(AMP/PNP)のX線結晶解析を行った。KIF2サブファミリーは他のKIFsに比較して、1)N末Neckが隣同士のプロトフィラメント間に垂直に伸び出す長いヘリックス構造をとりこれがKIF2が微小管の末端に結合し易くしまた同時にプロトフィラメントの隣同士の結合を不安定化する働きに寄与していること、2)ループL2が特徴的に長い指状構造を形成しその先端が次のチュブリンサブユニットとの溝に届き、微小管の端でプロトフィラメントがカールしてチュブリンサブユニットがはがれることを促進していること、3)ATP結合様状態でもヌクレオチド結合ポケットが開いた状態であり、微小管に結合することにより微小管結合のL8ループの位置が変化することによりポケットが閉じATPの加水分解が始まることが示唆された事等が分かり、KIF2が微小管端に結合し易くそれを脱重合する機構が明らかとなった。(Ogawa, T.et al. Cell 116:591-602,2004) 5)モノマー型(1本足モーター)であるKIF1Aが微小管上を動く機構の詳細をKIF1A1分しを0.2μmの蛍光ビーズに結合しOptical trapping法によりATP加水分解サイクルの詳細を解析した。その結果、KIF1Aは以前我々が示したようにBiased Brownian movementで動き、ADP状態の後、ADPが解離した直後に平均3nm,微小管プラス端に向かい動くことが分かった。(Okada Y.et al. Nature 424:574-577,2003) 6)培養海馬神経細胞にGFP標識のKIF5,KIF17及びそのmutantsを導入し多種類のcargo分子の動態を含めて観察したところ、軸索及び樹状突起の異なる方向性輸送の機構の一つとしてKIF5のモーター領域が軸索突起始部の微小管へ高い親和性をもって結合する、つまりモーター分子によってはモーター領域が微小管レールの特異性を認識しこれが振り分け輸送の機構の一つの要素となっていることが分かった。(Nakata, T.and N.Hirokawa JCB 162:1045-1055,2003)
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