研究課題/領域番号 |
13CE2004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
廣川 信隆 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20010085)
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研究分担者 |
金井 克光 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80214427)
岡田 康志 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (50272430)
仁田 亮 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (40345038)
田中 庸介 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (90302661)
寺田 純雄 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (00262022)
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キーワード | キネシンスーパーファミリー / 分子モーター / KIFs / 微小管 / 物質輸送 / 分子細胞生物学 / 分子遺伝学 / 構造生物学 |
研究概要 |
1)新しいモーター分子の探索とその機能の分子細胞生物学的解析。 哺乳類(ヒトおよびマウス)キネシンスーパーファミリー蛋白質(KIFs)の全遺伝子45個を同定した。45個のKIFsのうち物質輸送に関係していると思われるKIFsについて解析を進めている。 2)モーター分子のCargoとその認識・結合機構の解明。 KIF5が、KIF5 tailにhnRNP-U,Purα/β,PSF,FMRPs,Staufen等42種の蛋白複合体を介して特定のmRNA(CamKIIα,Arc等)と結合しこれを樹状突起内で輸送することを明らかとした。この結合蛋白のうちPurα、Purβ、PSF、Staufen等の発現をRNAiで抑制するとmRNAの輸送も抑制されKIF5を過剰発現するとその輸送が促進される事を明らかにし、小胞や蛋白複合体だけでなく、mRNAの輸送のメカニズムも明らかにした。(Neuron 2004) 3)物質輸送の制御つまりモーター分子のCargoとの結合及びモーター活性の制御機構の解明。 KIF17、KIF1Bβ等を初めとしてモーター分子とCargoの結合解離の制御機構について解析を進めている。 4)モーター分子の機能の分子遺伝学的解析。 既知及び新しく発見したKIFsの遺伝子欠失マウス及びtransgenic mouseを作製し、そのin vivoでの機能を解明している。 5)モーター分子の作動機構の分子生物物理学的及び構造生物学的解析。 a)私たちが発見した最も単純なモノマー型モーター分子KIF1Aの作動機構を解析するためKIF1Aモーター領域のAMP・PCP(ATP結合様状態preisomerization)、AMP・PNP(ATP結合様状態prehydrolysis)、ADP-AIFx(ADP・Pi状態、加水分解途中)、ADP-Vi(ADP・Pi状態、加水分解直後)及びADP結合状態のX線結晶解析を行い、AMP・PNP及びADP状態のモーター領域と微小管複合体の三次元構造をクライオ電子顕微鏡で解析した。その結果、主にSwitch IとSwitch II領域に起こる大きな構造変化が分かった。KIF1AがL11とL12を交互に使って微小管と結合しまたADP-Vi状態で微小管からactiveにdetachしBrown運動を基盤としてATP加水分解により微小管からのactiveな離脱とプラス端への結合を行うことにより方向性のある動きを作り出していることを明らかとした。ADP/PNP状態ではKIF1A L11が伸長し微小管のHelixIIに結合、ADP状態ではKIF1AのL12のK loopがtubulinのflexibleなC末端(E-hook)と結合し、ブラウン運動を行うことが分かった。(Science 2004) b)分子の中央にモーター領域をもち微小管を脱重合するユニークなKIF2の微小管脱重合の機構をKIF2CのADP結合状態及びATP結合様状態(AMP・PNP)のX線結晶解析を行い解明した。N末Neckはαヘリックスよりなりこれが垂直にprotofilament間の溝に伸長している。Loop2が実際にはantiparallelなβsheetよりなり長く伸び出してその先端にKVD motifを持つためKVD fingerと名付けた。ATP結合様状態(AMP/PNP)とADP状態でnucleotide binding pocketがopenであり、Loop8がshiftするとそれに伴いpocketが閉じてATPの加水分解が始まることが分かった。微小管とfitすると、微小管端のカールしたprotofillamentによくfitすることが分かった。この結果、N末がprotofilament間の溝にささり込みその側方の結合を切り、KVD fingerがtubulin heterodimer間の溝に伸びてそのカールした構造を保存することによりtubulin heterodimerの解離を促し、KIF2がprotofilamentと結合することによりL8がshiftしてnucleotide binding pocketが閉じATPの加水分解が始まる。これをくり返すことにより微小管が端からKIF2により脱重合する事が分かった。(Cell 2004) 6)遅い軸索輸送(細胞質蛋白群の細胞内輸送)の分子機構の解明。 KIF5がどのように遅い輸送で運ばれるCargoに結合し、輸送されるかをtransgenic mouseとイカ巨大軸索の実験を組み合わせて解析が進んでいる。
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