研究分担者 |
服部 束穂 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (10164865)
坂神 洋次 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (80107408)
前島 正義 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (80181577)
魚住 信之 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 教授 (40223515)
水野 猛 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (10174038)
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研究概要 |
17年度に行った個々の研究は順調に達成された。以下に具体的な成果を示す。 ジベレリン(GA)の信号伝達に関する研究:これまで研究を進めてきたGID1がGA受容体であることが生化学的実験により明らかにされた。さらに、このGA受容体とリガンドであるGAが結合した複合体は、GA信号の抑制因子であるSLR1を標的としGID1/GA/SLR1を形成する、そして、このヘテロ3量体がF-boxタンパク質であるGID2にリクルートされることによりSLR1の分解が引き起こされ、最終的にGA信号伝達の脱抑制が導かれるという機構が解明された。この研究成果により、初期段階のGA信号伝達機構は明らかにされたと言える。 植物ペプチドホルモンに関する研究:植物ペプチドホルモンは,その推定遺伝子の構造のみで実際に機能する成熟ペプチドが不明なものが多く存在する。その内最も有名なCLV3について,過剰発現株を作成した。過剰発現カルスから凍結切片を調整し,これを試料としてMALDI TOF-MSを測定し,さらにMS/MSで解析することにより、CLV3にコードされている成熟ペプチドホルモンの構造を決定することに成功した。この方法は他のホルモンへも応用可能であると考えている。 液胞のイオン貯蔵機能に関する研究:イネ液胞膜のカチオン(Ca^<2+>)/H^+交換輸送体について詳細に解析し,5分子種の中でOsCAX1aが全ての器官,とくにCa^<2+>が高濃度集積する細胞での発現が際立っており,Ca毒性を軽減する役割をもつことを明らかにした。液胞膜亜鉛輸送体MTP1が亜鉛障害を回避するために存在し,H^+との交換輸送による活性であることを明らかにした。 サイトカイニン(CK)受容体に関する研究:受容体遺伝子AHK2,3,4の三重変異体を用いてトランスクリプトーム解析を行い、CKホメオスタシスの維持機構やレドックスホメオスタシスにこれら受容体が重要な機能を担っていること、およびCKがストレス耐性に関与することを示唆する結果を得た。また共同研究により、これら受容体がオーキシンの作用を通じて主根の生長に関わっていることを明らかにした。さらに花粉形成に必須な役割を果たす新規遺伝子を同定した。 植物トランスポーターに関する研究:Naトランスポーター(AtHKT1)の組織別発現と細胞内膜局在性について抗体を用いた蛋白質レベルの解析を行ったところ、葉の木部柔組織の道管に隣接する細胞の原形質膜で発現していることが明らかとなった。また、athk1変異株では道管にNaが蓄積することから、AtHKT1がNaの取り込み口として機能しており、塩による阻害と深く関与していることが推測された。また、同族輸送系のらん藻のKトランスポーターも同様に耐塩性に深く関与する輸送系であることが明らかとなった。 植物の時計機構に関する研究:シロイヌナズナの二成分制御系因子のメンバーである5つの疑似レスポンスレギュレーター(PRR1/3/5/7/9)が概日リズムを生み出す生物時計中心振動体の主要な構成因子であることを示すと同時に、植物の時計機構に関する新しいモデルを提唱した。これらPRR遺伝子群に変異を導入することで、シロイヌナズナの光に応答した成長や、日長に依存した開花時期を制御できることも実証した。 ABA信号伝達に関する研究:本年度はイネSnRK2 family protein kinaseの高浸透圧ストレス/ABAによる活性化に関わるリン酸化部位の決定や発現部位の網羅的解析を行った。さらに、このkinaseと複合体を形成するタンパク質の検索を行い、scaffoldとして働くと考えられるタンパク質を同定した。また、種子形成におけるABA応答転写に関わる新規coactivatorを同定した。 硝酸輸送に関する研究:ヒメツリガネゴケのNRT2遺伝子群の定量的発現解析を行い、硝酸培地での増殖時に主成分となるものと窒素欠乏への応答、亜硝酸培地への適応時にそれぞれ特異的に誘導される成分を同定した。一方、厳密な翻訳後活性調節を受ける新規硝酸イオン輸送体をラン藻で同定し、活性調節に関わるシグナル伝達機構の概要を明らかにした。この輸送体の基質親和性は低かったが、親和性の向上した変異型の遺伝子を取得し、その構造解析から基質親和性の決定に関与する領域を同定した。
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