研究課題
<柳田研>動原体構成因子hMis12を解析し、hMis12が動原体の中核となるタンパク質複合体を形成する事、ならびに既知の動原体タンパク質に加えHP1の存在を新規に見いだした。Nature cell biologyに公表した。新規動原体タンパク質を新たに5種同定し、そのうちMis16とMis18が動原体タンパク質の局在化に最も上流で機能し、動原体におけるヒストンの脱アセチル化状態の維持に必要である事を示した。Cellに公表した。セキュリン/セパレース複合体の解析を進め、細胞周期の間期におけるセパレースの切断活性がDNAの修復に必須であるという新たな機能を見いだした。Natureに公表した。分裂酵母の突然変異ライブラリーを用いてセキュリン/セパレース、コンデンシン、Dis1/Mtc1、ヒストンと相互作用する因子を各々多数同定した。Genes to cellsに公表した。<武田研>相同組換えを含むDNA組換えおよびDNA修復は、そのほとんどがDNA合成のステップを伴う。このDNA合成に関与するDNAポリメラーゼは未解明のままである。ヒトDNAポリメラーゼは、最近5年間に少なくとも9種類が新たに発見された。我々は、polhとRev1そしておそらくpolzが相同組換えに関与することを見いだした。polqが除去修復に関与することも証明した。もう1つの研究成果は、乳癌抑制遺伝子、Brca2の機能解析である。Brca2は、損傷部位にRad51(大腸菌RecAホモログ)を集積するのに必須と考えられてきた。我々は初めてBrca2ヌル欠損動物細胞の作製に成功し、Brca2がなくても他の既知因子(Rad52とXRCC3)の動きでRad51が機能しうることを見出した。<竹安研>ゲノム高次構造構築の一般的原理を明らかにする目的で、(1)可視化技術の開発、(2)太いクロマチンファイバーの生化学的再構成系の確立、(3)核内タンパク質とのかかわり方の解明、を目指している。当該年度では、(1)オリンパスとの共同で高速AFMの開発に取り組み、DNAとDNA-結合タンパク質との相互作用を5-10画像/秒で可視化することに成功、(2)前年度までに確立した大腸菌ゲノム構造の観察法をStaphylococcus aureus、Clostridium perfringens、数種の始原菌、葉緑体ゲノムに応用し、基本構造としての40nmと80nmのファイバーを同定、(3)コアヒストン8量体、ヒストンH1、スーパーコイルを巻いた100kb環状DNAの3者から30-40nmファイバーを生化学的に再構成、(4)再構成クロマチンをAFM観察することによって得られた観察基板上でのヌクレオソーム分布のデータから、ヌクレオソーム間の距離に機能する熱力学エネルギーを算出し、そこから、ヌクレオソームが凝集・非凝集を引き起こすメカニズムを提唱した。<石川研>これまでの本研究により、脊椎動物テロメアDNAそのものが複製反応のよい基質ではなく、テロメアDNA・テロメア結合蛋白質TRF1/TRF2複合体は、さらに複製フォークの停止を高頻度でもたらすことが明らかになった。そこで、脊椎動物におけるテロメア複製とテロメアクロマチンの相互作用を検討するために、アフリカツメガエル卵抽出液を用いて解析を行ったところ、xTRF1(Xenopus TRF1)はM期テロメアクロマチンに結合する一方、S期クロマチンからは解離すること、この細胞周期依存的なテロメアクロマチンの変化にM期特異的蛋白質リン酸化酵素であるPolo-like kinaseが重要な役割を果たしていることが明らかになった。<松本研>細胞周期進行の監視機構であるスピンドルチェックポイントは、すべての動原体に紡錘糸が適切に接続するまで姉妹染色分体の解離を遅延させる。細胞周期が円滑に進行するためには、動原体への紡錘糸の接続完了にともないこのチェックポイントが解除されることが必要である。p31comet(旧名Cmt2)はスピンドルチェックポイントの解除因子の候補である。スピンドルチェックポイントの中枢因子であるMad2は生体内で2種の立体構造(N1とN2)をとりうる。N2型は試験管系でAPCによる蛋白質のユビキチン化を阻害する。この試験管系にp31cometを添加するとMad2のAPCに対する阻害作用が相殺されることを示した。この結果は、p31cometがMad2に依存したスピンドルチェックポイントの解除に作用することを強く支持する。なお、p31cometが紡錘糸上に存在することを前年度に発見したが、今年度はp31cometが紡錘糸上に存在することがすでに知られているEB1と物理的相互作用をすることを見いだした。この相互作用の生物学的意義を解明中である。
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