研究課題
<柳田研>ユビキチン化タンパク質の分解に中心的役割を果たすプロテアソームの制御機構について解析し、ユビキチンを付加する酵素Rhp6やUbr1が核膜に局在するCut8の機能によりプロテアソームを核内にとどめる機構を明らかにし、Cellに発表した。セキュリンCut2のドメイン機能解析を行い、新規の機能を持つドメインをCut2の中央領域に見いだした。この領域はセパレースCut1と物理的に相互作用し、セパレース活性を阻害すると考えられ、Genes to Cellsに発表した。Rad21、NIPBL、II型DNAトポイソメラーゼ(topo II)の機能について解析を行ない、動原体機能についての新たな知見を得た。コヒーシンとtopo IIの独立しながらも連携した分裂中期染色体制御機能を見いだし、Molecular Biology of the Cellに発表した。<武田研>ニワトリBリンパ細胞株、DT40で遺伝子破壊することによって、DNA修復・組換え酵素の、染色体維持機構における機能解析を行ってきた。(1)DNAポリメラーゼ、(2)ユビキチン化酵素、(3)Cell cycle dependent kinase (Cdk)の機能解析でそれぞれ研究が進展した。(1)については、Polhが相同組み換えのDNA合成ステップに、Polqが塩基除去修復に関与することを証明した。(2)では、染色体DNA切断が発生したあと1分以内に、クロマチンがUbc13依存性にユビキチン化されることと、それが相同組換えを促進することとを見出した。(3)では、遺伝薬理的手法を使って、培地への化合物添加によってCdkを可逆的かつ速やかにON/OFFできる実験系を樹立し、Cdkは相同組み換えの開始に必要であることを解明した。<竹安研>(1)AFM探針にGSTを介してタンパク質を取り付ける方法を開発し、核膜タンパク質ラミンB受容体とクロマチンとの相互作用における「力(60pN)」を測定した。(2)分裂酵母、ニワトリ赤血球、HeLa細胞の核内ゲノム構造を解析し、30nmや80nmのファイバーの存在を確認した。(3)ミトコンドリアや葉緑体、原核生物の30nmのファイバー構築には塩基性タンパク質とRNAが重要な役割を果たしているが、真核生物の30nmファイバー構築にはコアヒストン8量体とピストンH1のみが関与することを示した。(4)生化学的に再構成した30nmファイバーにトポイソメラーゼを加えることにより、更に高次の構造体を構築した。この構造はピストンH1が無い(即ち30nmファイバーが存在しない)条件では構築されなかった。以上の結果から、染色体・核様体構築メカニズムの普遍性と特異性とに関するモデルを作成した。<石川研>これまでの本研究により、複製フォークの進行がテロメアクロマチンにおいて停止しやすいこと、おそらくはこれを回避するためにテロメアはS期においてダイナミックなクロマチン構造の変換を遂げることをカエル卵抽出液を用いた試験管内クロマチン再構成系等を用いて示してきた。今回、細胞内におけるテロメアDNA複製を解析する目的で、DNA合成酵素αの温度感受性株であるマウスtsFT20細胞を用いて、合成酵素α機能を低下させたところ、テロメア長の異常な伸長、テロメアクロマチン構造の変化およびテロメアを介した染色体異常の出現を見いだした。以上の事実は、テロメアがゲノム内でも複製ストレスに特に脆弱な領域であり、その機能異常によってがん細胞で見られる染色体異常が起こりうることを示している。<松本研>スピンドルチェックポイントの機能因子、Mad2とこれに相互作用してチェックポイントの解除に機能するタンパク質、p31cometに主眼を置き解析をすすめてきた。17年度はMad2-p31comet複合体に、2種のあらたなタンパク質、EB1とダイニン中間鎖、を同定した。ダイニン中間鎖は有糸分裂中期から後期にかけてMad2-p31comet複合体に存在すること、さらに生細胞観察により、ダイニン中間鎖を欠損する細胞は、動原体と紡錘糸が正常に接続するにもかかわらず後期に遷移できないことをあきらかにした。これらの結果はダイニン中間鎖がp31cometと相互作用してチェックポイントの解除に機能することを示唆する。
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