研究課題/領域番号 |
13F03015
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
枡田 幹也 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (00143371)
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研究分担者 |
AYZENBERG Anton 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トーリック折り紙多様体 / トーリックシンプレクティック多様体 / Buchsbaum複体 / 擬トーリック多様体 |
研究実績の概要 |
トーリック折り紙多様体は,トーリックシンプレクティック多様体のシンプレクティック形式が超曲面で退化することを許したもので,2010年に Cannas da Silva-Guillemin-Pires によって導入された概念である.トポロジーの観点からすると,トーリック折り紙多様体は,幾つかのトーリックシンプレクティック多様体を余次元2の部分多様体に沿って貼りあわせたものと言える.トーリックシンプレクティック多様体のコホモロジーはある意味完全に分かっているが,トーリック折り紙多様体のコホモロジーは複雑で,これまで殆ど解明されていなかった.本研究では,Seonjeong Park, Haozhi Zeng らとの共同で,角付多様体である軌道空間の面がすべて非輪状の場合に,トーリック折り紙多様体のコホモロジー環をほぼ決定した. 上記の場合には,軌道空間の境界は面構造をもった多様体となっている.その面構造の双対は多様体の単体分割を与えており,環論で研究されているBuchsbaum複体と呼ばれているものの特殊な場合である.Ayzenberg氏は,トーリック折り紙多様体よりも広い幾何学的対象を考察し,環論の立場から得られているBuchsmbaum複体に関する h''-vector の事実に,トポロジーの立場からの解釈を与えた.これは非常に興味深い研究と思われる. 代数幾何におけるトーリック多様体の中で射影的なものはトーリックシンプレクティック構造をもつが,射影的でないトーリック多様体がどのような幾何構造を持つかの研究は余りない.トーリック多様体のトポロジー版として,擬トーリック多様体があるが,本研究では,実6次元の擬トーリックでトーリック折り紙多様体の構造を持たないものが存在することを示した.4次元の擬トーリック多様体はトーリック折り紙多様体となることが知られているのと比べると面白い.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
トーリック折り紙多様体のコホモロジー環の様子を調べることが当初の目的であったが,その研究を進め,環論におけるBuchsbaum複体のh''-vector に関する事実をトポロジーの観点から解釈できることを見出したのは,予期しなかった大きな成果である.
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今後の研究の推進方策 |
Buchsbaum複体で知られている事実をトポロジーの観点から理解することを推し進めている.その観点から,多重扇との関連,ポアンカレ双対をもつ有限代数と体積多項式との関連が見出され,新しい展開を見せている.この観点からの研究は新しく意義深いものと思われるので,これを推進する.
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