研究実績の概要 |
内部無撞着LSDA+U法および格子動力学法を組み合わせ、Fe3+及びAl3+を含有するMgSiO3ブリッジマナイトにおける不純物の安定配置および高温高圧熱力学特性を調べた。様々な不純物配置のエネルギーを計算した結果、Al3+はSiサイトを好み、高スピン状態のFe3+を隣接したMgサイトに引き寄せ、その結果Fe3+-Al3+の置換イオン対を形成することを見いだした。さらに準調和近似を用いて熱力学特性を計算した結果、マントル濃度程度のFe3+AlO3成分の固溶はブリッジマナイトの体積をわずかに増加させるが、熱力学特性に対してはほとんど影響を与えないことを見いだした。引き続き、鉄含有ブリッジマナイトと、これに次いで下部マントル中に多量に存在する(Mg,Fe)Oフェロペリクレースの熱弾性特性を計算した。地震学的観測モデル(PREM)を再現するようにブリッジマナイトとフェロペリクレースの量比を最適化した結果、パイロライトと同程度の割合で混合した場合に最もよくPREMを再現できることを見いだした(Nat Geosci誌に印刷中)。 ブリッジマナイトに続き、その高圧相であるポスト・ペロブスカイトについても、同様に内部無撞着LSDA+U法および格子動力学法を組み合わせ、高温高圧熱力学特性を計算した。得られた自由エネルギーをブリッジマナイトの結果と比較することで、鉄含有ブリッジマナイトのポスト・ペロブスカイト相平衡を理論的に決定した。その結果、Fe2+が固溶した場合は狭い2相共存領域が出現し観測されるような地震波不連続を生じることが可能であるのに対し、Fe3+が固溶した場合は2相共存領域が広がり不連続変化を生じにくくなることが分かった。また、2価鉄イオンが金属鉄と3価鉄イオンに分離する圧力誘起電荷不均化反応の可能性についても計算し、Alが存在する場合この反応が自発的に生じる可能性を示唆した。
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