研究実績の概要 |
Jongkees 博士は、まず 3,5-dihydrophenylalanine をフレキシザイム(菅研が開発した人工 RNA 酵素)で tRNA の 3’末端にチャージし、さらに FIT システムによって効率よくペプチド鎖に取 り込まれることを確認した。その上で、開始 tRNA に N-chloroacetyl-L-Tyrosine(N-ClAc-L-Tyr) をフレキシザイムでチャージして翻訳を開始することで、下流のシスティン残基側鎖と反応しチ オエーテル結合で架橋された大環状ペプチドライブラリーを構築に成功した。 また、Jongkees 博士は T. cruzi 由来の His タグ化された trans-sialidase に対して大環 状特殊ペプチドのリガンド探索を進めた。このタンパク質は市販されていないが、Jongkees 博士 の Ph.D.スーパーバイザーであり且つ共同研究者である Steve Withers 教授(ブリティッシュコ ロンビア大)から提供を受けた。この標的を磁気ビーズに固定化する条件を最適化後、2種類の ライブラリーを用いてセレクションを進めた。ひとつは、通常の大環状特殊ペプチドライブラリ ーで、確実なリガンドを獲得することを目的とした。もうひとつは、Pancreatic α-amylase で 試みた上記の 3,5-dihydrophenylalanine 含有大環状ペプチドライブラリーを用いて、セレクショ ンを試みた。前者は、非常に良好なセレクションのプロファイルが得られ、ペプチドリガンドの 獲得に成功した。この特殊ペプチド数種類を共同研究者に送付し、その阻害活性の評価を行った 結果、阻害活性をもつ特殊ペプチドがみつかり、現在その詳細な機能解析と結晶線解析をおこな っている。一方、後者のライブラリーでは、標的に対する特異的な特殊ペプチド群の濃縮がなか なか高くならず、現状では満足いく結果になっていない。現在、条件の再検討を行い、再度活性 種の濃縮に挑んでいるところである。
|